鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「子離れ」はしなきゃね。:読書録「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」

・ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2

著者:ブレイディみかこ

出版:新潮社

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ものすごく面白かった前作の続き。

10代前半の息子の姿や、取り巻く環境から、緊縮財政で痛めつけられ、格差も分断も進んでいる「イギリス」の<今>を垣間見せてくれます。

 

イギリスは日本の「ほんの少し未来の姿」

 

って想いがあるんでしょう。

実際、コロナ禍ではそういうことに気付かされることが少なくなかったです。(「格差」や「社会保障」の劣化という側面で)

 


イギリスの社会福祉はホントにガタガタにされちゃってるんだなぁ、その中で人々の心も荒み、分断も進んでるんだなぁ・・・と、ちょっと暗鬱な心持ちにも。

その中にあって、周りの人間関係(父母、祖父母、友人関係、地域の人たち)に影響され、時に傷つきながら成長する息子の姿が、若干のセンチメンタリズムと共に描かれています。

出版されてすぐに購入したものの、手を出す気になれず積読してたんですが、読み出したら「一気」でしたね。

通勤の行き来の電車で読んじゃいましたw。

 


前作を読んだときは、緊縮財政下で福祉がどんどん劣化している一方、紹介されるイギリスの教育の中身については「進んでるなぁ」という思いもありました。

その印象は本書でも変わらないんですが、その根本には能力主義的な考えもあることも前作を読んだ以降、知るところもあって、やや複雑な気持ちにもなります。

…でもまあ、やっぱり良いとは思いますよ。

音楽祭とか、宿題の話なんか読んでると。

(一方で、重要なのは「学校」での学びだけでなく、それを踏まえた親子や友人たちとの対話や連携なんだろうな…とも思います。

我が家のリビングでの会話は、中々こうは…)

 


カトリックのイイとこの小学校から、地元の公立中学校に進んだ「ぼく」。

前作では「それで良かった」と言ってたのに、本作ではもう少し違った感想を口にします。

そのことに少し動揺する作者。

そこには二人の関係の変化が垣間見えます。

少年は一歩「独り立ち」の道へと踏み出しているのです。

 


<それぞれの母と子のライフに思いを馳せた。

それは続いていくのだ。近くなったり、遠くなったり、繰り返し変わりながら続いていく。

いつの間にか2階に上がった息子がギターを弾いていた。ビートルズの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」に聞こえたので、なんてタイミングなんだろうと思った。しかし、よく聴いたらぜんぜん違っていた。流行りの新しいバンドの曲かもしれないし、息子が自分で作った曲なのかもしれない。

いずれにせよ、それはもうわたしの知らない曲だったのである。>

 


連載も本作で終わるようです。

親と子が別人格である以上、こういうエッセイを続けていくことには無理がある。

だから、残念だな…と思うと共に、「これで良かった」とも。

20年くらい経ったら、「孫」の話が出てきたりして。「岳物語」みたいにw。

 


#読書感想文

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