鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

こういうのを作れるのがNetflixなんですかね:映画評「Mank/マンク」

「市民ケーン」の共同脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツ(マンク)を主人公に、「市民ケーン」の製作の裏側を、ハースト、ハーストの愛人(マリオン・デイヴィス)、オーソン・ウエルズとの複雑な関係・軋轢を軸に描いた作品。

映画「市民ケーン」のスタイルをかり、当時画期的と言われた技術も駆使しながら、「市民ケーン」を語りつつ、現代性もしっかりあるという、意欲的な作品になってます。

さすがですな、デヴィッド・フィンチャー。

f:id:aso4045:20210304140228j:image

 

 

基本的構図は「オルガンを弾く猿」であるマンクが、「市民ケーン」という作品で自分をコケにしたハーストに一矢報いる…って話なんですよね。

「市民ケーン」は「映画史上最高の傑作」とまで言われるようになったんですから、その意図は見事に達せられたともいえます。

 

 

 

そういうストレートな話を、凝った構成と革新的な技術、素晴らしい演技で彩った…ってだけじゃなくて、その裏に複雑な人間関係と機微を抱えてるってのもあります。

マンクとハースト、マリオンの関係って、単に「道化師と王」ではなく、確かにそこには「友情」に近しいものがあるんですよね。

特にマリオンとマンクには「市民ケーン」の脚本が出来上がってもなお、そういう雰囲気があります。

 


「市民ケーン」自体、

「とんでもない暴君が転落した。自業自得だ、ザマーミロ」

って感じじゃなくて、ケーンへ感情移入し、一片の哀しみを共有できるような流れになっています。

そのことはマンクのハースト、マリオンへの複雑な感情の現れであり、それを本作でも描いているのではないか…。

 


まあ、これは僕の勝手な感想であって、作中ではそんな風に言及はされてないんですけどね。

f:id:aso4045:20210304140239j:image

 

 

いやはや実にレベルの高い作品ではあります。

欠点といえば、

「43歳」のマンクを演じるのはゲイリー・オールドマンは老け役メイク過ぎるwってのと(演技は素晴らしい)、

マンクとハースト/マリオンの関係に焦点が当たりすぎてて、もう一つの軋轢であるマンク/ウエルズのトラブルがあまり描かれない割には、ラストが二人の「対決」になってる収まりの悪さ

くらいじゃないでしょうか。

 


エンタメ性という意味では「市民ケーン」の視聴を含め、「事前勉強」が必要ってのもありますかね。

<権力者の横暴(社会主義者の弾圧)><フェイクニュースによる扇動>といった「現代」にも通じるテーマに関しては当時の政治運動に対する基礎知識が必要です。

そこら辺はこの記事が参考になります。

 


<『Mank/マンク』を観る前に知っておきたい7つのこと >

 


https://www.cinematoday.jp/page/A0007589

 

 

 

こういう作品、やっぱ劇場公開をベースに考えると、なかなか製作には躊躇しますわね。

今更、権力者側からの妨害工作とかはないでしょうけどw、商売になるかどうかは、ナカナカ読めないですから。(事前知識が必要な映画ですし)

そういう意味じゃNetflixらしい作品。

いよいよ「役割分担」が進んでいく感じだな〜。

 


娯楽大作:劇場公開

文芸作品:ストリーミング配信

 


それが映画業界全体のとっていいのかどうかは、なんとも言えませんが。

ま、僕には「ありがたい」んですけどw。