鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

安易な基準や答えはない…と言うこと。:読書録「僕が『PCR』原理主義に反対する理由」

・僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

著者:岩田健太郎

出版:インターナショナル新書

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「丁寧に考える新型コロナ」に続く岩田先生の書籍。

前作でも解説していた「PCR検査」「マスク」に関する解説を中心に、自身の経歴から見る日本の「感染症後進国」の状況、アップデートされた情報(10月に執筆されています)を踏まえたコメント、ワクチン開発後の見通し等…について書かれています。

 


前作や、色々な媒体での岩田先生の発言、Twitter・FB・ブログ等をチェックしている人にとっては「改めて」ってことはないかな。(「検査」については<事前確率><事後確率>の考え方がポイントになります。)

あえて言えば、日本の「感染症対策」の<今後>への提言が強く打ち出されていると言えるかもしれません。

岩田さんがこのタイミングで著作を矢継ぎ早に出版するのには、そこへの使命感もあると思います。(「商売っ気ゼロ」とも思いませんが)

 


個人的に一番驚いたのは、渡米するところの経緯です。

アメリカの病院で働いてらっしゃったのは、他の著作でも語られているので知っていたのですが、そのキッカケが「東京海上メディカルサービス」だったとは…!

いやはや、妙なご縁を感じてしまいます。

(NYでの研修医生活では苦労もされたようなので、ご本人がどう考えられているのかは分かりませんが)

 


本書の最後には「新型コロナ」の死者数に関するコメントがあります。

微妙な内容を含むので一部だけ(それでも結構な長さですが)を引用するのはどうかとも思うのですが、個人的な「覚え」として記録しておきます。

大切な視点だと思うので。

議論・批判については原文全体を踏まえた上でお願いしますね。

*2020年12月8日現在の死者数は「2,419人」です

 


<この原稿を書いている2020年10月10日現在、日本では新型コロナによって1641人の方々がなくなっています。

 


(中略)

 


日本では毎年、約100万人がなくなっています。その100万のうちの1641は、われわれ医療従事者にとって受け入れがたい数字なのか、受け入れられる数字なのか。

冷たく聞こえるかもしれません。しかし、僕個人は、受け入れられると考えています。

 


(中略)

 


おそらく、新型コロナによる死はたいていの人にとって納得できないものです。目に見えないウィルス、しかも、どこで感染したか分からないウィルスによって死なねならない、というのは納得しがたいことだと思います。

 


(中略)

 


死をどう捉えるかと言うのは感情の問題ですから、答えは人それぞれです。一般解はありません。

しかしながら、1641人と言う新型コロナの死者数を、取るに足らないものだと捉えるのも明白な間違いだと思います。

例えば、1985年の日航機墜落事故では、520人の方々が亡くなりました。1995年の地下鉄サリン事件で亡くなった方は14人です。2016年に相模原市の障害者施設で起きた殺人事件では、19人の方が命を奪われました。いずれも、死者の数だけで片付けていい出来事ではありません。

 


(中略)

 


こうした客観的事実を根拠に、「1641人の死なんて瑣末なことだ」と考えるのは短絡的であるだけでなく、危険でさえあります。ある問題の意味を死者の数だけで測るのであれば、ジェノサイドや戦争でさえもように正当化されうるからです。

「新型コロナの車は全世界で100万人を超えている。それに比べれば1万人なんてたいした数ではない」

そのような相対化は何事に対しても悪用できます。新型コロナの死者が今後うまく抑え込まれるにしても、あるいはさらに拡大してしまうにしても、亡くなった人たちの数は他の何物とも比べられるものではありません。>