鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

示唆があるような、ないような:テレビ評「欲望の資本主義2018」

NHKのBSで正月(1/3)に放送されたものを、オンデマンドで見ました。

去年も放送されていて、それは番組だけじゃなくて書籍のほうも読ませてもらいました。なかなか面白かったので、今回も楽しみにしてたんですよ。

f:id:aso4045:20180111214731p:plain「欲望の資本主義2018  闇の力が目覚める時」

 

今回は、「創造的破壊」のシュンペーターを核に、マルクスを横に置きながらいろいろな学者・経済人たちの話が展開される構成となっています。

「闇の力」は、シュンペーターがマルクスの論について語った言葉とのことです。

 

まぁ、正直ってわかりづらかったですw。多分にこちらの理解力の問題と言うのはもちろんなんですが。

 

最初は「闇の力」というのはマルクスの主張(共産主義)の事かと思っていて、資本主義が発展していくためには、共産主義的な考え方を取り入れていかなければならない…と言う話かと思ってたんですよ。

バーニー・サンダースの話なんかも出てましたから、決してその捉え方自体が間違ってると思えないんですが、一方で「闇の力」と言うのは、経済構造が社会構造に影響を及ぼす「構造の力」のことを言うようでもあり、そうなるとポジティブな評価はしづらくなります。

 

番組の作りとして、「こうあるべきだ」と言うようなことを主張するのではなく、いろいろな視点を提示する中から「示唆」のようなものを、それとなく見せるような作りとなっているので、なんだか、あっちこっち振り回されたような気分。

「格差」が資本主義そのものを破壊する要因となりかねないと言う認識はあって(シュンペーターは「資本主義はその成功によって自壊する」と言ってるようです)、それを回避するためには「配分」が重要だと言う考え方がベースにあるのは確かだと思うんですけどね。

(ここで言う「配分」のメインは、端的に言えば「労働賃金の引き上げ」です)

 

個人的に面白かったのは、ベーシックインカムについて、過去のアメリカにおける逸話が紹介されているところです。

ニクソンが大統領になった時、ベーシックインカムは導入される寸前までいったと言う話。

実際にベーシックインカムの実験をした時、その結果が非常に良好であったと言う話。

残念ながら、ちょっとした理由でそれは忘れ去られた逸話になってしまったわけですが、なかなか興味深い話ではあります。

このエピソードを紹介したのは、「隷属への道」の作者。

ちょっと気にはなってたんですが、読んでみたほうがいいかなぁと思っているところです。

 

まあでも、労働の自動化がさらに進展した段階であればベーシックインカムも政策としてリアリティをもって語れるかもしれませんが、まだそこまでではない。

しかしながら、現時点において、

「格差」の問題が極めて危機的な状況をもたらす可能性が高いと言うこと。

その危機を回避するためには「配分」に関する新たな政策・対策が必要とされていると言うこと。

ここら辺が番組の課題認識だと思いますし、僕もその点は共有できます。

 

では実際にそれをどうやってやっていくのか。

 

バーニー・サンダースの支持者は労働組合の団結の強化を打ち出していましたが、本当にそれが実効性があるのか。

企業別労働組合がメインである日本の場合、さらにその思いを強くするところがあります。(僕自身は、労働組合の存在意義というものを信じてもいるのですが、それがどこまで「社会的再配分」の政策推進に力を持てるかについては自信を持ちきれないというか…)

 

前作もそうだったんですが、番組を見てるだけだと論の構成が見えづらいところはあるんですよね。つい、「じゃぁ、どうしろって言うんだよ」って言いたくなっちゃうw。

この続編についても、何らかの形で書籍化してくれないかなぁと思っているところです。書籍だとそれぞれの出演者の主張がまとまって読めるので、そんな風にはならないと思うので。。

自分の理解力のなさを棚に上げて何ではありますがw。