鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ラスト…でもない?:「フロスト始末」

・フロスト始末<上・下>
著者:R.D.ウィングフィールド 訳:芹澤恵
出版:創元推理文庫Kindle版)


「フロスト」シリーズ第6作。
作者が亡くなったので、最終作…なんだけど、どうも遺族の許可を得て「若き日のフロスト」シリーズが書き継がれている模様。
そういう意味じゃ「ラスト」じゃないかもしれないけど、まあ「本家」としては最終作ですね。


最終作とか言っても、話の構造はいつもと同じ。
捌ききれないほどの事件(しかも結構ヘビー)に振り回されつつ、自分を追い出そうとする上司の攻撃をかわし、疲れ果てながら仲間と捜査に走り回り、見当はずれの推理を連発し、下品なユーモアを吐き散らし…
で、まあ何とか全てが丸く収まる。
読み終えて少し経ったら、6作のどれがどれだか区別がつかなくなるんですが、読後感はすごく充実している。
…それが「フロスト」シリーズです。
本作も、もちろんそう。


少し感傷的にさせられるのは、亡くなった奥さんとの思い出がチョコチョコ挟まれるあたりかな。
情熱的で、深い愛情からスタートした夫婦関係が、いつの間にやら無関心と憎しみの相混じる関係になり、病がその関係に終止符を打つ。
後悔と諦めをもって振り返るフロストの姿が胸を打ちます。
ここら辺はベテラン作家ならでは。


その一方で本書にはロマンスもあり、フレッシュな後輩の登場もあり…
う〜ん、ここでシリーズが終わるのは、やっぱり残念と言うしかないなぁ。
いつも分厚さに読み始めるのを躊躇しちゃうんですが、読み始めると最後まで引っ張られるこのシリーズは、やはり稀有な作品だったんだと思いますよ。


ウィンズテール&フロスト。
楽しい作品をありがとう!