鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

不条理劇に放り込まれる:映画評「ダンケルク」

冒頭からいきなり「目的地」の分からない逃亡劇に放り込まれたような展開。
アッチコッチに移動して、色々工夫もするんだけど、どうしてもすぐに「袋小路」に入ってしまうような閉塞感。
それが「よくできてる」だけに始末が悪いという…w



ダンケルク


作品は時間の進み方の違う「防波堤」「海」「空」の3パートに分かれてて、このうち「海」と「空」については臨場感抜群なのは共通しつつ、ちょっとヒロイックな展開もあります。
ただ作品のメインを占める「防波堤」は先に書いたような「閉塞感」の連続で、実に息苦しいシーンの連続。
上映時間100分と、短めの尺になってますが、これ以上長かったら、ちょっと耐えられなかったかもしれませんw。


自分が「不条理劇」のど真ん中に放り込まれたような「臨場感」を楽しむという意味では、実によくできた作品です。体験型娯楽としての「映画」の可能性を開いた作品…とも言えますかね。
そういう意味じゃ、IMAXで観るべきでしょう。(残念ながらフォーラスは小さい劇場でしかやってませんでした)


一方で、「ダンケルク」という題材はヒロイックな点も多い展開をしているので、そこらへんをもうちょい出して欲しかったかな、って感じもします。
「空」の方は比較的そういう展開なんですが、「海」の方は、「臨場感」を優先して狭い舞台での物語展開としてますが、ここは史実でももっと幅広い「連帯感」を打ち出すことができるはずなんですよね。
正直、ここが「小さく」まとまってる感じが、残念でした。


ま、ノーランは「閉塞感」と「臨場感」を観客に感じて欲しかったんでしょうから(そしてそれは大成功してます)、これは「無い物ねだり」の部類なのかもしれませんが…w。