・東京消滅 介護破綻と地方移住
著者:増田寛也(編)
出版:中公新書
- 作者: 増田寛也
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2015/12/18
- メディア: 新書
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最近個人的興味から「お勉強」している「地方創生」に関しての参考書読み。
もともとの「火付け役」とも言える「日本創生会議」のレポートをベースにした新書第2弾となります。
前作(地方消滅)でも触れられていた、「ブラックホール」である「東京」で急速に進行する「高齢化」と、それに伴う介護問題について論じられています。
問題意識は前作でも触れられてたような気がします。
・団塊の世代を中心に「働く世代」が集まる「東京」で、構成比率の高い世代が「高齢化」を迎えつつある。(2025年が問題が大きくなる時期として想定されています)
・東京は「土地」「人材」の面で、介護を必要とする「高齢化層」を受け入れる余地がない。
・「人材」が地方から集まることは、ブラックホールとしての「東京」の機能強化となり、「地方消滅」の拍車をかけてしまう可能性がある。(その先は「日本消滅」)
「日本創生会議」はその解決策として、「介護ロボット技術の活用」「外国人介護人材の受け入れ」などと併せ「地方移住」を選択肢の一つとして提示したようですが(「東京圏高齢化危機回避戦略」)、その中でも「地方移住」に注目が浴びてしまう結果となった…というのが増田氏の主張。
ただ本書を見る限り、確かに「選択肢の一つ」ではありますが、かなりシッカリと検討されており、その方向性を志向しているのは確かだと思います。
ま、「問題意識」からしたら当然ですし、「地方創生」という観点からも、「介護産業」を地方での産業として位置付け、地方における「雇用」の維持・拡大につなげたいってのはあるでしょうね。
推進に向けた課題は、
「受け入れ自治体の『税』も含めた負担」
と
「要介護状態になる前段階からの移住の推進」
でしょうか。
どちらも受け入れサイドの「地方」が疲弊しないためには非常に重要です。
加えて「介護人材の所得水準の引き上げ」。
これは「地方移住」とは関係なく、介護産業の維持・発展のためには不可欠な視点と言えます。
僕自身は「確かにそうだよな」と思ってますけどね。
「東京圏」を「G経済」の牽引地域とするという観点からも、「個人」のクオリティライフという観点からも一考に値する考え方だと思います。
本作では「シェア金沢」が地方移住の一モデルとして、七尾の恵寿会病院が「地域医療の先進取り組み例」としてあげられていますが、石川県に4年住んで、確かにそういう考え方からすると選択されるにふさわしい土地だと思いますよ、ここは。
ただ問題は「スピード感」。
2025年なんてすぐですからね。
果たしてそれに向けて今の取り組みのスピード感で間に合うのか?
この観点からは特に「地方」サイドのアクションが気になります。本書では幾つかの先進的取り組みに積極的な首長が紹介されていますが、それはあくまで「点」。果たして面として考えると、どこまでのスピード感が…って気になります。
やっぱここら辺は「国」が出てこないといけないのかもしれない。
決した褒められたもんじゃありませんが、そんな気もしています。
もう一つは「その先」。
人口減少局面にある中で、いずれは高齢者の数も減ってきます。
「危機」を乗り越えるための対処は必要です。
でもそのあとにどんな社会を形作るのか?
ただでさえ少なくなる生産人口において、「何かを生み出す」産業ではない「介護産業」従事者が大層を締めるっていうのは、健全な姿じゃないように思うんですがね。
それとも「G経済」で稼いだ資金が回ってくる?
だとすれば「L」と「G」の再配分をどのように考えるのか?
東京圏の高齢化対策ってのは「目先」の危機であり、その対処は極めて重要ですが、その先には「次に社会」の姿を見据えておかなければいけません。
そこをシッカリ踏まえておかないと、下手すりゃ地方は東京の「姥捨山」ですよ、結局。
作者たちはの素点も理解した上で主張してるんですが、それが政策的にフォローされているのか、人口動態を冷静に見据えた「政策」が考え、」打ち出されているのか?
「保育園ブログ」への安倍総理の答弁なんか聞いてると、ちょっと暗い気分になります。
そうは言っても、野党の方もパッとしない状況ですがねぇ。
(結局やれるのは安倍政権。だからこそ優先順位を間違えずにしっかりやって欲しいと思ってるんですよ)