鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「自覚」

・自覚 隠蔽捜査5.5
著者:今野敏
出版:新潮社

自覚: 隠蔽捜査5.5

自覚: 隠蔽捜査5.5



隠蔽捜査シリーズ第7作。
第四作の「初陣」(隠蔽捜査3.5)に続く短編集になります。
しかし、このカウント方法、混乱してきませんかねw。



「初陣」は主人公(竜崎)の友人である伊丹刑事部長からの視点で書かれた連作短篇でしたが、本作は今まで出てきた色々な登場人物達の視点から描かれています。
第三者からの視線から見た「竜崎」の人物像。
「印籠」はコレです。



<竜崎署長は、あらゆる意味で普通ではなかった。本人は、自分のことを、いたって常識的な人間だと思っているようだ。
それが貝沼には不思議でならなかった。>(「漏洩」)



「警察官僚」として「合理的な判断」を行う。
竜崎の「常識」はここにあり、それは「組織人としての判断」や「人間関係への配慮」といったものに優先される。(「合理的」にそれが必要であれば、対応するが)



このスタンスが第三者からは「常識」と見えないところにこのシリーズの面白さはある訳ですが、第三者目線で書かれる短編集はそのギャップを更に浮き立たせてくれます。
そういう意味で、「美味しいところ」だけをコンパクトに読める短編集は「お得」かも。
もっとも最後には(本作には7編収められています)満腹感も強くなってきますがw。



正直言って「大森署長」という立場に置いておくことで、シリーズとしては停滞感も出てきているように思います。「印籠」の出し方はドンドン上手くなっては来ていますがw。
そろそろ次のステージに・・・と思うようになって、既に数作品。
このまま「おなじみ」路線に走っちゃうのかなぁ。それはそれで楽しめるから、悪くはないんですけどねぇ。