鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「土漠の花」

・土漠の花
著者:月村了衛
出版:幻冬舎(iBook)

土漠の花

土漠の花



見城徹氏が自信を持って推し、秋元康氏が大推薦していたので、電子書籍化されてたのを契機に購入。
「機龍警察」シリーズでエンタメ作家としての力量はある程度評価できるかな、って読みもありましたしね。



結論から言えば、その「読み」通り。
もう一歩踏み込むと、「読み以上」のものは残念ながらなかったかな、と。
ある意味、読者を選ぶ「機龍警察」シリーズ(ハードSF、かな?)を読んだことがない読者にとっては「新しい才能」として受け入れられるかもしれませんね。一方、従来からの読者にとっては、広く認められることに喜びを覚えながらも、「今更」感があるかも。
「うる星やつら」や「パトレーバー」を作ってた頃の押井守みたいなもんですかね、言ってみれば。ま、押井守よりはメジャー路線を押し出してきているようにも思いますが。



ソマリアに海賊対策で派遣されている自衛隊員。
偶然の経緯からソマリアの氏族間の争いに巻き込まれることになり、心ならずも激しい戦闘を繰り返すことになる。



このハードな設定の中で、自衛隊員一人一人のキャラクターに踏み込み、「現在」の苦境にそれぞれが「過去」と対峙しつつ、自らに「決着」をつけて行く展開となります。
これは「機龍警察」で作者が提示した「構図」と全く同じです。
そこに心情的にグッと来るものは確かにあるんですが、一方で「やっぱこういう展開になるかぁ」って気持ちにもなっちゃうんですよねぇ。面白いのは間違いないんだから、余計なお世話なのは分かってるんですけど。
(「SF」である「機龍警察」に比べて、本作は現代社会を背景にしていて、その分、「現実」の制約を受ける面があります。ちょっと「弱いな」と感じるのは、そこら辺の影響もあるかも)



あと、ラスト。
うーん、ちょっと甘過ぎませんかね?
ここは好みの分かれるところかもしれませんが、個人的には気になりました。
まあ作品の「傷」になるってほどではありませんが。



いずれにせよ、かなりレベルの高い作品なのは間違いありません。
「SF」に抵抗があって、「機龍警察」を読んでない方にとっては、本作から入るのは大正解でしょう。
個人的には「機龍警察」シリーズの続きを読もうかなぁって気分になってます。
楽しませてくれるのは間違いありませんから。