鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「和菓子のアン」

・和菓子のアン
著者:坂本司
出版:光文社文庫(Kindle版)



帰省先から戻る列車(サンダーバード)の中で読んだ作品。
二時間半の乗車時間で読み終えるのにちょうど良い分量でしたなw。



この作者の作品は、ズッと前に「青空の卵」を読んだ覚えがあります。
「ひきこもり探偵」シリーズの第一作であるこの作品は当時から結構評価が高くて、それで読んでみた訳ですが、正直僕には「今ひとつ」だった記憶があります。
悪くはないんだけど、ピンと来ない。
ま、そんな感じです。


そんな訳でこの作者の作品は何となく手に取ることがなかったんですが、どっかの本屋で「一押し」になってるのを見たことと、コメディ色が強く読みやすそうだったことで、ポチッとしてみた訳です。
旅行中に読むには気楽で良さそうな感じがありましたからね。



結論から言うと「正解」。
かなり楽しめました。
ヒロインの造形にはある種の「陰」もあり、その点は本作の最終話でクローズアップされるんですが、それも「深刻」なトコロまでは行かず、程よいところで収められています。
まあシリーズ化されてるようですから、「今後」は分かりませんが、今のところこのバランスは作品にとって良い方向に働いてるんじゃないでしょうか。



あと絶妙なのは舞台設定ですね。
作者自身がそこら辺は「あとがき」で触れていますが、
「和菓子屋」という設定もさることながら、
「デパ地下」
これが効いてます。
読み始めたときは、てっきり「小振りながらも趣味の良い和菓子屋さん」・・・みたいな舞台を予想してたんですが、それが(失礼ながら)上趣味のカケラもない「デパ地下」とは。
でもこれがハマってるんですよね。
考えてみればデパートには色々な客が訪れ、数多くの店員が働いてる訳ですから、こういう短篇ミステリーの舞台としては適してる訳です。
でも僕の発想にはない舞台設定でしたねぇ。



登場人物達のカリカチュアされたキャラ設定も楽しめます。
「マンガ的すぎる」
と思う人もいるでしょうが、コメディとしてはこれくらいはOKではないでしょうか。
ラノベ的っちゃあラノベ的ですが、面白くて世界観が壊れないのなら、個人的には許容範囲です。



続編はまだ書籍化されてないようですが、されたら読みたいですね。
シリーズが続くにつれて話がシリアスの方向に振れて行く危惧はちょっと感じてはいるんですが・・・。