鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「日の名残り」

・日の名残り
著者:カズオ・イシグロ 訳:土屋政雄
出版:ハヤカワ文庫(Kindle版)



「食わず嫌い」はいかんなぁ。
本書を読み終えての感想です。
カズオ・イシグロの高名はもちろん知ってたんですが、何と無く敬遠して来てたんですよね。
現代文学。
なんか面倒そうじゃないですかw。



ところが読んでみたら、これが面白い!
出来の悪い推理小説なんかより、ナンボか楽しめました。
「文学」って言うと、何となく辛気臭い「私小説」を思い出しちゃうんですがw、「読んで楽しめる」ってのは良い小説の基本なんだなぁと、改めて痛感します。
(その「面白さ」が色々なんですけどね)



でもよくよく思い返してみると、たぶん僕は本書が単行本になった時に買ってるはずなんですよ。
で、途中まで読んで、
「退屈だなぁ」
と投げ出しちゃった記憶が…。
うーん…。



結局、この「面白さ」が分かるには、僕の方にもそれなりの「準備」が必要だったのかもしれません。
「日の名残りが実感できるようになったから?」
笑いながら妻がそんなことを言ってましたがw、存外当たらずとも…。
「人生の黄昏」というより、「職業観」を多少なりとも身につける時間が…というかんじですがね。



高い職業観と職業倫理を持ちながら、それに囚われることで「何か」を失う。



多義的な側面を持つ本書を一言でまとめることは出来ないし、それは作品の面白さを損なっちゃいますが、例えばこういう面もあるでしょう。
そしてこの困難さを実感するには、多少の「時間薬」が必要だった。
そんな風に感じてる訳です。



ヴォネガットと同様に早川はカズオ・イシグロの作品も電子書籍化しています。
こちらの方もボチボチと…と今思ってるところです。