鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「恋しくて」

・恋しくて
編・訳:村上春樹
出版:中央公論新社



連休前にAmazonから手元に届いたので、連休中にゆっくり読もうと思ってたんだけどね。
琵琶湖のロッジで半分・・・ってとこまでは思惑通りだったんだけど、京都では台風18号騒ぎで読むどころじゃなくて、結局バタバタして連休明けまで引っ張る羽目に。
結構、面白い本なんだけどね。



村上春樹がチョイスした短編9編に、村上春樹自身の新作短編(「恋するザムザ」)を加えた、恋愛短編小説10作がまとまった短編集。
各作品には村上春樹の短評がついてて、さらに「恋愛甘苦度」として「甘味」「苦味」の星判定がされている。
「甘味/苦味って・・・」と、その単純さに当初は呆れたけど、考えてみたら恋愛小説ってこの切り口で整理されちゃうかもね。
ま、「お遊び」は「お遊び」だけど、存外深みもあったりして・・・なんて時点で訳者にはめられてますなw。



「ハッピーなモンが読みたいよね」と思えば、「甘味」評価が高い方が楽しめるはずなんだけど、これが読んでみると「苦味」評価が高い作品の方が(僕自身は)興味深く読めた。
訳者は収められた作品のうち、「ジャック・ランダ・ホテル」(アリス・マンロー)と「モントリオールの恋人」(リチャード・フォード)を「上級者向け」としてるけど、本書で僕がチョイスするならこの2作かと。
ストレートなのも良いけど、やっぱり短編の醍醐味はこういうツイストが利いたとこなんじゃないかなぁ。



ちなみに新作「恋するザムザ」。
まあ悪くはないし、楽しめはします。
でも個人的には「設定に凝りすぎ」って印象。これを「恋愛小説短編集」に収めるのは、ちょいと無理筋なんじゃないかな、と。
まあ編者も自分なんだから、「あり」なんだろうけど、読者としてはちょっとした違和感がありました。
楽しめることは楽しめるんだけどね。



村上春樹の新作ねらい・・・なら買うまでもないか、と。
でも「質のいい短編小説が読みたいな」と思うなら、いいチョイスだと思うよ。
編者としての村上春樹も、なかなかの巧者ですから。
「文庫待ち」で十分かどうかは、村上春樹ファン度によりますなw。