鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

・色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
著者:村上春樹
出版:文藝春秋



「1Q84」あたりでは「総合小説」みたいなことを作者は言ってたけど、本作はその部類じゃないだろう。
サイズ的にも、作品の肌合い的にも、「スプートニクの恋人」「国境の南」「アフターダーク」あたりの作品に近い印象かな。長さとしては1、2作ともってのもあるけど、あれほどファンタジー的な要素は強くないからね。
ま、毀誉褒貶は相変わらずだろうし、ボリュームタップリで、バカ売れした「1Q84」の後だけに、何だか後退したような印象もある本作に対する風当たりは強いかも。
僕自身は「悪くない」と思ってるよ。「大長編」の合間に発表される、一群の「ちょっと短めの長編」が結構好きだってのもあるんだけどさ。



テーマはまあ、相変わらずw。
「喪失感」
そして、
「決定的に何かを損ねてしまう悪しき『何か』」。
この「ダークサイド」こそが作者の現代に対峙するテーマなんだろう。
「ダークサイド」との闘いが「大長編」の場合は分厚くなって、「中長編」の場合は「喪失感」の扱いが前面に出てくる・・・って言うと整理しすぎ?w
でも本作での按配はそんな感じだ。



先に呼んだ妻も「面白かった」と言ってるし、二人とも一日もかけずに読み終えたから(妻は一晩で一気)、悪くないと思うんだけどね。あえて言えば「予想の範囲内」ってのがどうかってとこかな?「1Q84」は確かにそれは超えてたよ。
個人的には主人公の年齢設定に「もう少し」とも思っている。
「30台半ば」ってのは、確かに「喪失感」をテーマにする場合、具合のいい設定だとは思うんだけどね。
でも村上春樹も「60」。
読む側の僕も「50」が近くなってきているだけに、もう少し「その先」を読みたいような気がするのよ。
まあ「50」にもなって「喪失」しちゃったら、「取り返しがつかない」ってのがあるかもしれないけどさw。



今までのパターンだと、次は「大長編」?
本作は本作で楽しんだけど、是非そちらも楽しみにしたい・・・ってのが最終的な「感想」でしょうか?


あ、リストの「巡礼の年」は聴いてみたいと思いますw。