鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「誰が音楽を殺したか?」

・誰が音楽を殺したか?
著者:清水量介、森川潤
出版:ダイヤモンド社(Kindle版)



内容としては取り立てて目新しいことが言われている訳じゃない。



大手レコード会社の既得権益意識が新しいビジネスモデルへの転換を阻んだこと。
スマホの急激な普及が、業界の脆弱化に拍車をかけていること。
その中で安全思考への比重が高くなり、チャレンジングな取組みが少なくなり、新人の活躍の場が失われていること。
etc、etc…



先日読んだ「メディアメーカー」で、アーキテクチャがビジネスの形を根本から変えてしまうことがある」みたいなことが書かれてたけど、音楽業界の現状は「まさに。」ってかんじだねぇ。
「レコチョク」で日本ならではのネットビジネスを構築したかに見えながら、スマホの普及で一気にそれが崩壊…ってなあたりは、顧客本位じゃないビジネスモデルの末路を感じさせる。
煎じ詰めれば、
音楽ファンに応え、その裾野を広げ、定着させることができたか?
残念ながら、この問いに合格点は与えられないだろう。



もっとも本書が面白いのは中身よりも(内容も、概覧という意味では良くまとまってる)出版形態。
「週刊ダイヤモンド」の一記事を括り出して、電子書籍化してるんだよね。(価格は100円)
雑誌の値段に比べればこの価格設定は高値だけど、他の記事に興味がなければ「雑誌を買うよりは…」ってことになる。少しでも興味がある人にリーチを伸ばしたいってのは、主張としても、真っ当な作者の考えだと思うよ。



一方で「雑誌」という形態からは考えさせられるコトもある。
CDの登場で、アルバム単位で音楽を聞くアーキテクチャが崩れ、iTunesの登場で曲のバラ売りに拍車がかかったコトは、「音楽の聞き方」そのものを変えてしまった。
この記事のバラ売りは「雑誌」に同じような事態をもたらす可能性も…ってなことですな。
本書を読んで、
「しっかりした特集記事は、こういう形で十分成立するわ」
と思ったよ。
それが「雑誌」を補完しつつ、両立する可能性も、勿論ある。
そう言う方向を考えての本書の出版だろうけど、さて行く先がどうなることやら…。



あるいは環境が激変した音楽業界から出版業界への「警告」の矢だったりして…。
ってなのは考え過ぎ?w