鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ウッディ・アレン職人芸を堪能できます。:映画評「ミッドナイト・イン・パリ」

帰省中、新幹線の中で本作を。
アレン映画では久しぶりのヒットと聞いてたんすが、「確かにねぇ」って感想です。
いつもの人生に対するシニカルさを前面から抑えて、実に雰囲気のある世界を作り出していながら、根本のところでは「やっぱりウッディ・アレン」。
いやはや、脱帽するしかありません。

「ミッドナイト・イン・パリ」



文句言いたいところもありますよ。
主人公は「過去への憧憬」が現実逃避でしかなく、「今に生きる」ことの大切さに気づくんですが、それにしちゃあ、あまりにも描かれる20年代のパリは魅力的すぎる。
これで「今を大切に」って言われても…っての正直あります。



でも、多分このテーマそのものが「マクガフィン」なんですよね。
「そうでも言っとかないと、話が終わんないでしょ」
ってこと。
ヘミングウェイやフィッツジェラルドにとっても20年代のパリは「過ぎ行くもの」でしかなかった。
永遠にとどまれる「時間」はない。
所詮、人は「今」にしかいられないのだ。
大切だろうがなんだろうが。
…こう言っちゃうとシニカルすぎる?
でもだからこそ「過去」は美しい。
そのオマージュこそが本作のテーマであり、主人公が現代に戻ってきたのは、単なる話を終わらせるための方便じゃないかと、僕は思うわけです。



まあアレコレ考えるのは別にして、実に気持ち良く仕上がってる作品だと思いますよ。
それでいて批評性も含まれていて、アドバイザーとして実に格好いいヘミングウェイも、同じことを繰り返しブツクサ言わせることで、「軽さ」のようなものを感じさせたりして、「ふーむ」って感じです。ピカソとかケチョンケチョンだしw。



アレン映画だと、「カイロの紫のバラ」なんかが、現実逃避の甘美さと苦味を描いて秀逸でしたが、本作はそこまでの出来じゃないです。
でも「苦味」を抑えた分、万人受けしたかも。僕にとっても、ネ。



それにしても主人公の婚約者一家の俗悪ぶりは何なんでしょう。
何かあったの、ウッディ・アレン?