鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「亜玖夢博士の経済入門」

・亜玖夢博士の経済入門
著者:橘玲
出版:文春ウェブ文庫(Kindle版)



「不都合な事実」(「真実」とまでは…w)を突きつける橘氏の初期作品。
亜玖夢博士という「天才」が経済理論を解説し、その理論に乗っかった人間が酷い目に合う…と言うスタイルの短編5作が納められた短編集ある。



取り上げられている経済理論は、
「行動経済学」
「囚人のジレンマ」
「ネットワーク経済学」
「社会心理学」
「ゲーテルの不完全性定理」
分かりやすく解説してくれていてて、良かったと思うよ。
まあ漠然とは以前から知ってる理論だからってのはあるかもしないけどね。
それでエンタメと両立させながら解説する手際は大したもんだと思った。



物語的には最初の二作が、「理論に乗っかって、痛い目に合う」というパターン通りの作品。
三作目も構図は同じなんだけど、ラストの主人公の立ち位置が前作とは異なってて、4作目・5作目はパターンを踏襲しながら、登場人物たちは理論に翻弄されるばかりは終わらないというオチになっている。



この差っていうのは、「意思」なんじゃないかな?
理論っていうのは、過去を解説する上においては整合性を保つことができる。
しかしながら未来を予想する点においては、それだけで不十分であり、「どうしたいのか?」「どうありたいのか?」という意思を持たなければ、結局は理論(それは「他人」でもある)に使われるだけに終わってしまう。
何か、そんなことを表してるんじゃないのかなぁ、ってのが僕の感想だ。
ラストの「大団円」的展開もそれ故なんじゃないかな、と。



本書を読んで一番驚いたのは、「物語として、楽しめる構成になってる」ってことかもしれないw。
「入門書」として読むのも勿論いいんだけど、それにあわせて「短編小説集」として楽しめる作品だと思う。
いやはや、意外でした。



確かシリーズになってるんだよね。
続編も電子化されたら、読んでみようかと思ってます。(書籍で買うほどではないかってのはあるけどw)