鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「父と息子のフィルム・クラブ」

・父と息子のフィルム・クラブ
著者:デヴィッド・ギルモア 訳:高見浩
出版:新潮社



ネットか何かで書評を見かけ、面白そうだったので読んでみた。
「映画」について語られた話を読むのは昔から好きなもんで(その映画を観たことがあろうが、なかろうが)。
読後の感想は、
「面白かった」。
もっとも、予想してたのとはチョット違ってたけどね。



作品としては、
「15歳で登校拒否となった息子に、映画を定期的に一緒に観ることを条件に高校を辞めることを認め、その後、息子が大学に進学するようになるまでの3年間の日々を描いたノンフィクション」
ってとこかな。
青春時代特有の「悩み」(まあ女性関係ですなw)に右往左往する息子だけでなく、失業状態にある父親の方も、結構悩みが尽きないようで、単なる教育的関係じゃない親子の姿が、本書の一つの読みどころだろう。
ここらへんは「予想外に面白かった」ところ。




一方、期待はずれだったのは「映画への言及度合い」。
勿論、かなりの映画が作中には取り上げられるんだけど、それに対する作者の評価や、一緒に見た息子の反応や考えが、(あるにはあるんだけど)思ってるほどには記述されてない。
3年間を過ごして、最初は「ジェームズ・ディーン」も知らなかった息子が、評論家ばりの意見を言うようになるんだから(「『ロリータ』はキューブリックより、エイドリアン・ラインの方が傑作」。そうなのか)、そこに「成長」はあったんだろうけど、その課程があんまり体系だって描かれてないんだよね。
読む前には、映画作品に対する親子の評価・意見がメインで、親子の身辺雑記は背景的なものかと思ってたんだけど、その「身辺雑記」がメインで、作品への評価とかが背景ってのが本書の構成。
まあ、その「身辺雑記」が面白いからいいんだけどね。




まあそれにしても10代後半。
こんなに女のこのことばっかり考えてるものかね?

・・・考えてるかw。

ドロップアウトした割には、結構息子の恋愛関係は充実(?)してるようで、こういう境遇だと、あんまり映画にのめりこむってのもないかなぁ・・・なんて思ったりしたのは、経験薄き我が10代の「ひがみ」かもw。
でもここまで懊悩した経験はないかなぁ・・・。




「映画」ってことに過大な期待を抱きすぎず、「ある一時期における父と子の交情の物語」と思えば、それなりに楽しめる作品。
という意味で、帯を「椎名誠」が書いてるのも、「納得」ですw。(「岳物語」の方が面白いけどネ)