鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ビジョナリー・カンパニー2」

・ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則
著者:ジェームズ・C・コリンズ 訳:山岡洋一
出版:日経BP社



「今更、『ビジョナリー・カンパニー』?」



まあ、確かに。
本書で「Great」とされた11の企業のうち、いくつかの企業は破綻するか、買収されるしてるようだからね。
(特に「ファニーメイ」と「サーキットシティ」は本書での取り上げられ方から考えても、「読み違い」が大きい)
勿論、その主因は「リーマンショック」にあるんだけど、作者の主張によれば、そうした「浮き沈み」を越える企業こそが「Great」。
現時点から見返せば、本書の主張そのものに「?」が付されるのもやむをえないところがある。



まあ「フォーチュン誌のアメリカ大企業500の中から、厳密な基準を持って11企業を選定」とは言っても、そこに「運」の要素は排除できない。
「50%ずつに『株が上がる』『株が下がる』の情報を送り、結果的に当たった方を更に半分に分けて『上がる』『下がる』の情報を送る。それを繰り返して、ずっと当たった人に対して、『次の情報が欲しければ情報料を』と申し出る」
ってな感じの詐欺があるくらいだからね。
この手の分析は、常に「結果論」の可能性を考慮せざるを得ない。
(そういう意味では対象となった企業のTOPの少なからざる人が成功要因として「運」を上げているって言うのは興味深い)



だから現時点において本書の「法則」の絶対性は揺らいでいると言ってもいいだろう。
でもだからこそ僕は本書を読み返してみたくなったんだよね。(一応、出版された頃に一度は目を通してはいる)
「確かにここに『絶対』の法則はない。しかし全てを『運任せ』ということは組織運営においてはあり得ない。
『運』が大きく影響することを前提としながら、組織運営における基盤となる『考え方』は何なのかを考えたい」
・・・ま、そういうこと。
本書はその要求には依然として応えてくれていると思う。
読み返してみて、再確認した思いだ。



「個人としての謙虚さと、仕事への厳しさ/徹底を兼ね備えた第五水準のリーダー」
「『最初に人を選び、その後に目標を選ぶ』『厳しい現実を直視する』『針鼠の概念(単純明快な戦略)』『規律の文化(人ではなく、システムを管理する)』『促進剤としての技術(新技術に振り回されない)』『悪循環でなく弾み車(ゆっくりと劇的な転換をする)』・・・という基本的考え方」



組織運営論としてはやはり水準が高いんじゃないかと思う。
一言で言えば「規律」なんだろうけどね。
「組織にどうやって『規律』を根付かせるか」
換言すれば、そのことについて語った作品とも言えるだろう。
(その「難しさ」、それだけが全てを担保する訳ではない「厳しさ」は、その後の現実が教えてくれる訳だが)



個人的には「ビジョナリー・カンパニー」って考え方(特に「BHAG」)には複雑な思いがあるんだけどw、その前段を論じた本書の方が、作品としてはシッカリしているような気がする(前読んだときも思ったし、今回もそう感じた)。
「結果論」という可能性を排除できないながらも、こういう「分析」はやっぱり意味があるんじゃないかね。
「現実」に取り組んで行くってのは、そういうことだろう。
「正しい答え」や「法則」があるわけじゃない。でも「スタイル」はあり得る。
そんな風に僕は考えている。



どうかな?