・萩を揺らす雨 紅葉町珈琲屋こよみ
著者:吉永南央
出版:文春文庫(電子書籍)
読む前はクリスティのミス・マープルもののようなミステリーかと思ってた。
- 北村薫的な日常ミステリー。
「こりゃ、出張の長距離移動に読むのに相応しい」
と、kinoppyでDL。
でも、そういう作品じゃなかったんだよねぇ。
おかげで何だか最初の方は違和感を感じながらの読書になってしまった。
いや、コレは勝手に思い込んだコッチが悪いんだけどね。
多少、そう言う方向にミスリードする「売り」をしてるような気もするけど(ジャケとか)、思い込みを外してみると、コレはコレとして、良くできた作品になってる。
読み終えた時には、満足感が当初の違和感に置き換わってました。
「思い込み」はいかんねw。
最初に違和感を感じたのは、(一人称じゃないんだけど)あまりにも視点が主人公よりだったこと。
ヒロインの主観にストーリーが左右されていて、
「コレは本格ミステリーとしてはどうかなぁ」
と。
いや、本格ものなんかじゃなかったんだけどさw。
結局、本書は「老境に差し掛かったヒロインの境遇と心情の移り変わり」を描いた作品なんだよ。
確かにミステリー要素は含まれてるけど、決してそれがメインじゃない。
設定として「サザエさん」じゃなく、物語の進行に連れて、ちゃんと状況を進展させていることが、それを裏付けている。
そう思い直して読むと、結構な「深み」もあって、なかなかの作品なんじゃないか、と言うのが僕の読後の評価。
少なくとも出張移動中は退屈しませんでした。
ま、この表紙はやっぱりミスリードだとは思うけどねw。