鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ブレイズメス1990」

・ブレイズメス1990
著者:海堂尊
出版:講談社文庫



「桜宮サーガ」の初期に位置し、「ブラックペアン1988」の続編となる作品。
海堂作品は次から次に出版されるので、「基本的に文庫になってから」と決めているため、ちょっと久しぶりって感じかな?
まあ全作追いかけてるわけでもないし・・・。



サーガの初期を描いている割には、またもや新しいキャラクターが登場。
天才的外科医にして守銭奴「天城雪彦」。
まあ「何人、天才的な医者が出てくるんだよ」って気もしますがw。



でも個人的には本編(バチスタシリーズ)より、ブラックペアンーブライズメスと繋がる流れの方が僕は好きかな。
キーマンとなる世良医師は「極北」シリーズで現在の姿を表していて、そこでは病院の建て直し屋に姿を変えている。
この変転に一体何が・・・ってのも興味深いんだよなぁ。
どうもそれは本作の天城医師との関係の中から出てくるんじゃないかと読めるからね。



本作で天城はある種の頂点を極める。
しかし彼が目的とする医療センターは「現代」を舞台とする作品には登場していない。
・・・となれば、本作以降に描かれるはずの物語には、その挫折が描かれるはずであり、そこに世良の変身も絡んでくるのではないか・・・と。



つまり本作は真の意味では「完結」してないわけですな。
そしてその続きとなるべき物語は、未だ描かれていない、と。



うーん、それが出た時、文庫になれるまで待てるかな?
いや、この間出たばかりの「極北」シリーズの新刊も、こうなるとえらく気になるし・・・。



・・・とまあ、若干自分の「方針」に疑念wが出て来るくらいの面白さは本作にはあったよ。
どうしてもシリーズ(サーガ)の一部を構成する作品になるから、「切れ味」の点では鈍くなるところもあるんだけど、その分、登場人物の錯綜ぶりは楽しめるわけで、ここは割り切るしかないだろう。
単体で本作を読んでも楽しめるとは思うけど、やっぱり前作(「ブラックペアン1988」)を読んだ方が楽しめるし、「バチスタ」シリーズを読んでる方が、「ニヤリ」と出来るシーンが格段に多いのは事実だからねぇ。



ところで本書は「過去」を描いた作品なんだけど、その「過去」が僕が社会人になった頃と重なっていると言う事実。(つまり僕は世良医師と同世代なんだね)
ついこの間のような気分でいるんだけど、もう四半世紀になるんだもんなぁ。
自分の青春が「昔話」の領域に入っていると言う・・・。
本書にはそんな感慨もあります。



すごく個人的な話だけどw。