鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「希望論」

・希望論 2010年代の文化と社会
著者:宇野常寛、濱野智史
出版:NHK出版



宇野氏が78年、濱野氏が80年生まれ。
うーん、若いですなぁ。
東浩之(71年)が出てきた時も、「若いなぁ」と思ったんだけど、もうその下の世代が論をはるようになってるんだねぇ。
宮台真司(59年)あたりはもう「御大」化しつつあるのかも。
未だに何となく宮台氏に「新進気鋭」って印象があるのは、僕が年を取った証拠でしかないんだろうねw。<宇野 僕は、希望という言葉そのものに「こんな世の中だからこそ希望が必要」というニュアンスが入ってしまうことには抵抗したいんです。「こんな世の中」でじゃないんですよ。むしろ希望自体は満ち溢れているのに、それを活かせていない日本社会のシステムがダメだという話です。
濱野 そもそも絶望する必要なんてない。そこからですね。>(p.210)



と言うスタンスは、その若さ故(って二人とも30にはなっているが)、そうあるべきだと思う。
現状批判に奔走するのではなく、現時点から未来につながる途を模索する。
20年も「失われた云々」って愚痴ってきたんだからw、そろそろそう言う流れが出てきてもしいだろう。



彼等が「希望」として見ているのは「インターネット」。
ただし梅田望夫氏的なアメリカに倣った「実名公共圏の確立」ではなく、「ガラパゴス」と言われる日本のネット状況を「繋がりの社会性」として肯定的に評価しているところが特徴的だろう。
「匿名のゴミ箱」として2ちゃんねるなんかを否定するのではなく、そこにある可能性を、日本の社会性と絡めて評価すべき、と言う。
僕は「2ちゃんねる」はやっぱり「ゴミ箱」だとは思うけどw、でもこういう視点は面白いなぁと思ったね。
否定するよりも、その構造(アーキテクチャ)を認めた上でえ、その社会的活用を考えるっていうのは、確かに一理ある戦略だと思う。
今の時代を「拡張現実の時代」って定義したのも、「なるほどなぁ」思った次第。



現実社会へのアプローチとしては、東氏が「一般意志2.0」で描いたネットによる大衆意見の可視化やゲーミフィケーションが論じられている。
ソーシャルネットワークによるコミュニティの創設とかね。
社会学者だから、何か分かりにくい言説もチラホラではあるんだけどw、全体としては面白く、現実性も踏まえた内容だったと思う。
何よりも基本にあるマインドセットが前向きなのがイイじゃん。<(宇野氏)これからの日本が目指すべきは、「ともに非正規雇用の共働き夫婦が子ども二人育てられる」社会であることは自明です。>(p.174)



うーん、そう言う社会がいいのかどうかは確信もてないけどねぇ。
・・・ってとこが「旧世代人」の証拠?w