鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「眠れる女と狂卓の騎士 ミレニアム3」

・ 眠れる女と狂卓の騎士<上・下>ミレニアム3
著者:スティーグ・ラーソン 訳:ヘレンハルメ美穂、岩澤雅利
出版:ハヤカワ文庫



「ミレニアム」もついに3部作のラスト。
リスベット・サランデル を巡る物語も決着を迎える。
「待望」ではあり、「ページをめくるのももどかしい」想いもしたものの、読み終えると一抹の寂しさも。
ここら辺が続編を待望する声にもつながるんだろうねぇ。
(逝去した)作者自身も続編に着手してたと言うし。



でもこの完結度を考えると、僕は続編はなくてもいいんじゃないかと思うね。
いくつかの伏線はあるようだけど(リスベットの妹とか)、闇の中からリスベットが世に生まれ直す物語として、この3部作は素晴らしい出来だ。
ラストでミカエルに開かれた扉は、物語を終わらせるに相応しいシーンだと思う。



まあそれにしても驚くべき連作ではあった。



古めかしい密室ミステリーの枠組みに現代性をミックスさせた1作。
リスベットの復讐譚を軸にしたスピーディーなアクション活劇の2作目。
そしてスパイ小説+法廷サスペンスを展開する本作。



それぞれが独立しながら、これで全体としてまとまって一つのストーリーを紡ぎ出しているんだから恐れいる。
評判に違わない出来です。



個人的にはドライブ感満載の2作目が好きかな。
でも3作目の、リスベットに関わる人たちが連携を取りながら(「狂卓の騎士」)、彼女を救い出す計画を実行するって「一体感」がある展開も「締め 」としてはイイ感じなんで捨て難い。
こういうシリーズものって、得てして1作目の出来に続編が追いつかないんだけど、このシリーズは「例外」ですな。



ダイエル・クレイグの映画がもう少しで公開されるけど、「1作目」だからなぁ。是非ヒットして2作目・3作目の映画化も実現して欲しい。
ダニエル・クレイグは結構ミッケくんにハマってると思うんでね。



読む人によっては「陰謀論」的な設定が合わないかもしれない。
それはそれでエンターテイメント小説と割り切ればいいんだけど、一方で大国の思惑に翻弄されがちな北欧の小国の生き残りのためのリアリズムみたいなものも感じた。
これに比べたら日本は「平和ボケ」だわ。



まあ何にせよ、近年出色の出来のシリーズであることは確か。
数日間、耽溺する価値はあります。