鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「『お手本の国』のウソ」

・「お手本の国」のウソ
著者:田口理穂 ほか
出版:新潮新書



日本の場合、
「外国はこうなのに、日本じゃ・・・」
的なスタンスが結構幅を利かせている。
これは明治維新以降の「坂の上」を目指す日本のスタンスに根ざしているし、戦後の復興もこの姿勢故に成し遂げれたとも言える。
逆に「もう学ぶべきものはない」といった思い上がりは(戦前のように)極端なナショナリズムの高揚にもつながりやすく、こういう謙虚さは忘れちゃいかんとも言えるだろう。



ただ問題はそれを正確にとらえているか。
時にその把握が不十分なゆえに実情を知ったことが失望感につながり、極端な否定にすっ飛んだりするから注意する必要がある。



本書では今の日本で「お手本」とされる外国の政策や国情について、その国で生活している日本人ジャーナリストらが論じたもの。
取り上げられているのは以下の7つだ。



フランス:少子化対策
フィンランド:教育
イギリス:二院制議会制度
アメリカ:陪審員制度
ニュージーランド:自然保護政策
ドイツ:戦争責任
ギリシャ:観光政策



題名は「ウソ」になってるけど、これは煽り。
基本的にはこれらの国々で行われている政策は概ね「事実」であり、効果もあげている(イギリス・アメリカは微妙かな?)。
ただそれらが導入されるには各国ごとの社会的・歴史的背景があり、それと切り離して政策だけを云々することには無理がある。
・・・ってのが本書のスタンス。
その社会的・歴史的背景をコンパクトに説明してくれていて、なかなか興味深い作品になってたよ。
個人的には「フィンランド」「イギリス」「ドイツ」の項が特に面白かったな。



来年は世界的にトップが交代するタイミングになっているが、日本もどうやら選挙になりそうだ。
一方で先進国を中心として財政状況は厳しくなっており、とれる政策の選択肢は狭まってきている状況にもある。
少なくとも「あれもこれも」という贅沢は言えないだろう。
そうした中では「どのような国にしたいのか」について社会的議論がされ、それに沿って政策が取捨選択される必要がある。
そのとき間違いなく、「外国では・・・」って意見が出てくるんだよね。
それを冷静に判断するためにも、本書の意義は小さくないんじゃないだろうか?



まあ、大仰に構えなくても、手軽に読んで参考になる本なんだけどさw。
年末年始にごろ寝しながら如何?