鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「訣別」

・訣別ー大前研一の新・国家戦略論
著者:大前研一
出版:朝日新聞出版


週末の大阪W選挙は橋下陣営の圧勝だった。果たしてそれが橋下人気によるものなのか、「大阪都」構想を核にした彼の政策への支持なのかは分からないけど、今後、「民意を得た」として、彼は政策を推し進めて来るだろうね。
これは民主主義の常道。
民主党のゴタゴタを経た上での選挙だから、「それとこれは別」とは とは(双方とも)言えないだろう。


本書は20年以上前に書かれた「平成維新」をアップデートしたもの。
大前氏による「平成維新」の動きは、20年前は目に見える大きな成果を得ることはなかったように思うが、震災による日本社会の転換期の認識共有の流れと、グローバル化の中での国際社会の「ゆらぎ」を踏まえ、今一度、日本への提言が行われている。


「平成維新」及び本書の中核となる理念の一つが「地域主権」だと思うけど、 これは橋下氏の「大阪都」構想にも通じるところがある。


国/道州(広域自治体)/基礎自治体


と言う構成や役割分担は、かなりオーバーラップしてる印象。
「平成維新」でぶち上げた地域主権構想がここに来て実現のとば口を見つけた…と言うと、いくらなんでも大前贔屓過ぎるかなw。


現状の分析から、障害となっている過去の歴史体験を論じた上で、今後の日本の進むべき方向を提案する。
実現に至るまでのテストケースまで提示してるあたりが、具体的で興味深い。
「大阪都」がその「小さな成功体験」を生み出す実例となる可能性はあるかもしてない。


コンサルタントらしいクレバーな切り口は、読んでて気持ちがいいくらいだ。
個別の政策に対して異論があるのは当然だと思うけど、「大局観」はこんな風に持つべき、と言えるかも。
ただ政策の実行に当たっては個別具体的な利害関係者とのせめぎ合いが不可欠だろう。
その中で、どう言う 「妥協」をして行くのか。
それこそが「政治」である。
橋下市長の手腕はそこではかられることになる。
(だから「提言」がある意味、実現性の面から「?」な印象があるのは当然だろう。
そこをどう埋めるのかが「政治」だと思うよ)


橋下市政については、その進め方が独裁的にならないかどうかがポイントのようだ。
そこを橋下氏のキャラクターを交えて今から云々しても仕方がない。
そのあり様をチェックするのがメディアの仕事であり、議会の役割だろう。
単なる人格攻撃や揚げ足取りでない、建設的な議論を双方が築き上げることがこれからは求められる。


来るべき議論の事前知識として、本書は意義ある作品と思う。
それは単に「大阪」だけでなく、日本の次世代に向けた議論になる。



まあそれにしてもイイ議論のたたき台(大阪都)が出てきたもんではあるがねw。