鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「本へのとびら」

・本へのとびら 岩波少年文庫を語る
著者:宮崎駿
出版:岩波新書



宮崎駿氏が選んだ50作品の紹介と少年文庫・児童文学に対する思いを綴った 前半と、
3.11以降の児童文学・アニメそして社会のあり方について語った後半、
と言う構成。
50作品の紹介もなかなか面白いんだけど、 重みがあるのは何と言っても後半。
立ち読みするならw、ここだろう。


ピックアップされた50作品のうち、僕が読んだことがあるのは18作品。
これが多いかどうかはワカンナイけど、自分としては早い段階に背伸びして文庫の普通小説に移っちゃった自覚があり、ここら辺の作品に耽溺し切っていなかったことは「後悔」になってる。
勿論、今読んでも十分楽しめるんだけど、それはそれ。
少年時代に夢中になった物語の影響ってのは、やっぱり違うだろう。


だからその後悔の想いと共に、僕は子供たちにこう言った作品を紹介してやりたいと思っている。
そんな時、本書は役に立つんじゃないかな?
「親が薦める本とは違う分野に自ら進んで行くことが重要」
ってのも、自分の経験上も分かるけどねw。


3.11以降に寄せられた文章は、あまりのトーンの暗さにチョット驚かされる。
震災後の「コクリコ坂から」の完成発表会の時も宮崎氏は厳しい話をしていたが、その思索が深めらてているのがよく分かる。


そして「今」への諦観と「次世代」への託す想いの強さ。


ここには宮崎作品を観てきた者に響くものが強く感じられる気がする。
と同時に、宮崎作品と共に歩んで来たものとしては、「今」にこそ足掻きたいとも思うんだよね。
それが僕らの世代の役割なんじゃないか、と。


少年たちに物語を届け続けてきた宮崎氏が「少年(少女)」に想いを託すのは、まあ自然だろう。
そして託されたものたちには託されたものとしての役割がある。
今、そこに立っているのは僕らの世代だと思うんだけど、どうだろう?


だからって、今すぐ何かが出来るわけじゃないんだけどね。
でもこの「一歩」がどこへ向かうかは、「未来」の方向性につながって行くものと思いたい。
…何て青臭いことも言いたくなるような作品です。
まあ元気なオッサンですわw。