鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「Googleの脳みそ」

・Googleの脳みそ 変革者たちの思考回路
著者:三宅伸吾
出版:日本経済新聞出版社



何か題名だけみてると、新手の「脳科学」本か、Google紹介本、あるいは自己啓発本って感じだけどw、中身は日本経済の現状を分析し、今後の方向性を提言した作品。
しかも結構硬い部類に入る作品だと思う。
この作者の前作が「市場と法」って題名らしいけど、作品の印象はコッチに近いですね。(作者自身、続編と意図付てるし)



<「社会にとってよいことだと思えば、まず果敢に挑戦する」マインドと、「未来を創り出す興奮」に駆られた企業人の背中を押す社会の仕組みが、成熟した社会の雇用を生み、経済成長を促します。前者はいわば「突破者の精神」であり、本書のタイトル『Googleの脳みそ』です。後者はルールという様々な社会規範が規定するもので、「やる気システム」と呼ぶことにします。これら2つがないと、社会は停滞し暗くなります。>(P,7)



と言う様に、作者のスタンスは経済成長重視で、規制緩和派。
本書では、法律・慣行・官僚の裁量等々における機能不全の現状が分析され、如何にその中で「成長の可能性」は蔑ろにされているかが、具体的事例に沿って描かれ、解説されている。
まあ読んでてイライラして来るくらいだよw。



ここら辺は割と一般の「リベラリスト」っぽいんだけど、本書の特徴はそうした中で、「司法」の役割を重視してる点だろう。
「実務」っという観点からは、
これはナカナカ面白い目の付けどころだなぁ。
「政治」を動かすには色々な横槍が入ってしまう可能性が高いが、こう言う形での正面突破と言うのは(GoogleやAppleの例があるのだが)珍しい提言だと思う。



一方で、ホリエモンの例を考えると、正面突破に失敗したときのリスクが日本の司法の場合高すぎるのも事実。
最終的に勝訴した旧長銀経営陣の場合だって、長期の争訟(しかも一審・二審は敗訴)を考えると、司法を活用しての正面突破ってのは、現実的手段ではあるが、ハイリスクって印象は否めないだろう。



実はこの点は僕は作者が挙げていない勢力=「メディア」の活用がポイントになると思っている。
現状、マスメディアの大層は「既得権益」よりのスタンスをとっており、チャレンジャーの正面突破を擁護する立場にはない(ホリエモンが象徴的)。
これはゾンガイ日本社会の「結果平等重視」の性向に沿った面があり、ナカナカ変革は難しい側面がある。
ただ今メディアはネットの伸長もあり、大きく変わりつつあるのも現状。
その変動の中で社会変革を後押しする勢力も力を持って来るのではないか。
僕はそう思ってるんだよね。
震災以降、実際にそういうメディアも現れて来てる様にも感じてるしね。
メディアの変革は、世論形成のあり方にも影響し、社会変革の方向性も変え得る。
その視点(希望かもしれないけど)がもう一つ、必要だと思うんだよなぁ。



本書で挙げられるl「元気なニッポンへの処方箋」は以下の10。



①整理解雇の規制緩和
②コンプライアンス委員会の廃止
③フェアユース制度の導入
④ネット選挙の解禁
⑤投票価値の格差解消
⑥「おしんルール」を創る
⑦「財界タイガーマスク」は素顔で行動する
⑧競争・市場・格差の意味を教える
⑨自分の脳みそで徹底的に考える
⑩壮大な夢を語る



個々には異論もあるが、まずはこう言う方向に足を踏み出さなければ、この閉塞感は振り払えない、ってのは確かだろう。
そのためには我々自身のマインドセットを変えていかなければならない。
結局のところ本書の根幹はそう言うところなのかもしれない。



ま、そうじゃなきゃ、本なんか出さないかw。