・創発的破壊 未来をつくるイノベーション
著者:米倉誠一郎
出版:ミシマ社
読んでて元気が出てくる本。
特にサラリーマンにはオススメです。
実は最初は「創造的破壊」という題名だと思って購入したんだよね。
そう、シュンペーターの。
「シュンペーターの現代的意義を論じる」
みたいな本かと思ってたんだけど、「創造的」じゃなくて、「創発的」。
「ありゃりゃ」
と読み進める内に、面白さに引き込まれてしまった。
個人的にはここ最近で最も啓発を受けた本かも。
かなり「個人的」ではあるんだけど、客観的にもいい本じゃないかと思います。
作者が掲げる「創発的破壊」と言うのは、一つの産業すらも潰してしまうようなシュンペーターの「創造的破壊」と異なり、「現場」での「改善」に近いイメージ。
日本お得意のカイゼンを、製造業だけではなく、サービス業・金融業にも取り入れる。
ただし現場が勝手に行なうのではなく、大きなビジョンを示した上で、その方向性を共有して取り組むコトによって、社会をも変革するような大きな推進力を生み出す。
中央集権的な社会ではなく、分権的社会が目指される現在においては、このような取り組みには可能性が大きくあり、こう言うコトを得意とする日本にも未来がある。
本書を僕はこう読んだんだけどね。
そして「サラリーマン」という職業を、単なるworkerじゃなく、
「新しいやり方を考え、実行することで、組織・社会変えて行く存在」
として規定し直している(ように読める)。
ソーシャル・ビジネスまで視野に入れるこうした「サラリーマン」に関するパラダイムシフトは、
「夢想的すぎる」
とも言えるだろうけど、個人的には「あり得る姿」として受け止めることができた。
ま、「誤読」の可能性もあるけどねぇーw。
作者が提議する今後の日本社会におけるビジョンは、
(1)脱原発・脱炭素化社会におけるエネルギー開発のリーダーへ
(2)これまでの東京一極集中から分権化社会へ
(3)世界で進む少子化高齢化問題の先進的解決国へ
その具体的方策として、震災も踏まえながら、「供給・需給両面からのエネルギー・イノベーション」「道州制」「高齢化対応型スマートシティ」を提案している。
まあここら辺は議論があるところだろう。
ただ日本あるいは日本企業、さらにはサラリーマンの「可能性」を謳い上げている点において、本書は実に「肯定的(ポジティブ)」な作品だと思う。
でもさ。
今の状況で必要なのは、こういう「前向きさ」じゃない?
少なくとも僕は力づけられたよ。
夏休みの終わり、仕事に取り掛かる前に読むには、実に相応しい一冊だったかな?w