鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

偶像としての「土方歳三」をホボ完璧に映像化しています:映画評「燃えよ剣」

まあ、司馬遼太郎の原作がそういう話なんですけどね。

それを映像で更にブラッシュアップしています。

岡田准一はハマりまくり。

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広角レンズを多用する原田眞人監督の<絵>は深みがあって、とにかく魅せてくれます。

キャストも「日本のいちばん長い日」ほどは凝ってないですが、それでもリアル感を醸し出しています。

有名どころからのチョイスでも、<芹沢鴨>の「伊藤英明」、<徳川慶喜>の「山田裕貴」、<近藤勇>の「鈴木亮平」等、なかなか雰囲気出してます。

(しかし山田裕貴、よくあの「徳川慶喜」、演りましたなw)

 


ストーリーについては、基本的に「幕末の流れ」「新撰組の経緯」等が分かってないと、「?」かもしれません。

…けど、そんな人は観んやろね、これはw。

オリジナルキャラの女性(柴咲コウ)は要らんかったかも。

そうなったら司馬遼太郎原作ですらなくなるけど。

 


改めて見ると、ほんと会津藩/松平容保の不憫さが際立ちます。

<竜馬>で明治維新の改革性を語る一方で、<土方歳三>や<河井継之助>でそれに抗するサイドにも光を当てる。

司馬遼太郎ってのは、なかなか深いところがありますね。

 


#映画感想文

#燃えよ剣

#原田眞人

#岡田准一

「われらはレギオン」ほどのぶっ飛び具合はないです。:読書録「シンギュラリティ・トラップ」

・シンギュラリティ・トラップ

著者:デニス・E・テイラー 訳:金子浩

出版:ハヤカワ文庫(Kindle版)

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「われらはレギオン」シリーズの作者による、ノン・シリーズ作品。

シリーズの第4部を読んで、改めて面白かったんで、単独作品の方も読んでみました。

 


環境汚染で地球が疲弊している時代。

一攫千金を狙って宇宙採掘に賭けたコンピュータ・エンジニアが、エイリアンの仕掛けた罠にはまって…

 


という展開。

シンギュラリティを超えたAI勢力と、集団知性的な進化を遂げた勢力とがせめぎ合う宇宙世界があり、その狭間で人類が絶滅の危機に瀕する…って大風呂敷が広げられている中w、エイリアンに<寄生>されたエンジニアが、仲間たちと連携をとりつつ、宇宙軍の圧迫をかわしながら、人類の危機を回避するために奮闘します。

 


まあ、ストーリーラインは「スペースオペラ」なんですが、主人公のエンジニア気質が淡々としたユーモア感をもたらす辺りは「レギオン」シリーズに通じるものがあります。(主人公にとっては事態は相当に<悲劇的>なんですけど)

そこがこの作者の「味」でもあるんですがね、

 


正直言って前半の展開はちょっとまどろっこしいかな?

主人公がエイリアンと<同化>して<対話>するようになってからの展開は怒涛で、チート(w)なんですが、そこまでがちょっと「間延び」する感じ。

総じてテンポの良い作家なので、ちょっとココは残念でした。

 


続編を書くことができなくもないオチではありますが、それをやっちゃうと、<ボブヴァース>に近くなっちゃうかな?

あっちの方も、「こっからどうすんねん?」って感じにもなってますがw。

個人的にはもう一つあるらしいシリーズ作品の方を読んでみたいです。

…そこまでの人気はないのかしらん。

 

 

 

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#シンギュラリティトラップ

#われらはレギオン

 

 

 

デジタル庁でのご活躍には期待したいです:読書録「テクノロジーが予測する未来」

・テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる

著者:伊藤穰一

出版:SB新書(Kindle版)

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「web3」については、どっかのタイミングで勉強せんとな〜と思ってたところに、伊藤穣一さんの新書が出たので、読んでみました。

他にもうチョイ深く突っ込む新書もあったんですが、どちらかと言うと、「イメージの把握」をしたかったので、ここら辺がちょうどいいかな、と。

結果的には「それくらいで良かった」。

それでも「よ〜分からんとこが結構ある」けどw。

 


個人的な把握としては「web3ってのはブロックチェーンを使った情報の管理方法」ってとこでしょうか。

その「情報」がどこにでも持って行ける感じ?

音楽だったら、自分が作ったプレイリストをSpotifyでもApple MusicでもAmazonミュージックでも聴ける…ってイメージか知らん?(ストリーミングのデータだから違うかな?w)

 


「NFT」はそこに「価値」をつける。

その「価値」を使うことで、分散型自律組織(DAO)を動かしたり、「ブランド」的なネットワークを作ったり…とかって感じかしらん?

その向こうには会社とか、自治体とか、政府の活動の変革(中央集権的な側面を緩める)の可能性がある…らしいw。

(その観点から評価しつつ、投機的な動きにはネガティブです)

 


「メタバース」は肉体に制約される<個人>を、その制約から解放する<場>として、評価されてる感じ。

決して「ゲーム」だけの話じゃないw。

 


一通り読ませてもらって、

「分かったような、分からんような」。

その「可能性」については漠然と見えた感じはあるんですが、はてさて自分としてはそこにどう絡んでいくのか?その先に何があるのか?

ま、ぶっちゃけ今のところは「様子見」が正解かな…と思ったりもしましたw。

 


(ちょうど読み終わった後に、ジャック・ドーシーが「web3」を批判して、「web5」を立ち上げたって記事を読みました。


https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2206/13/news071.html


これまた「分かったような、分からんような」なんですがw、データはデータとしてあるだけじゃなく、それをどう活用するか、活用するための仕組みをどう作るかが問題。

そこの仕組みの部分に「VC」が入り込みすぎ…って話かな〜とか思ったりして。

違うかもしれんけどw)

 


最終章では伊藤さんが「デジタル庁」と色々やってることに触れられています。

その成果として「ワクチン接種証明」というのは、チョイしょぼいですが(あれが行政のシステムにしてはスムーズであることは認めます)、「今後に期待」かな。

とにかく手を入れて欲しいところはヤマほどありますからね。

 


…というわけで、デジタル音痴のおっさんが読むにはちょうどいい感じ、でも踏み込めば奥は深そう…って作品でした。

色々あった末に(w)、活躍の場を日本に移した伊藤穰一さんには期待したいなと思ってます。

 

 

 

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#テクノロジーが予測する未来

#伊藤穰一

 

割と派手な展開でした:読書録「石礫 機捜235」

・石礫 機捜235

著者:今野敏

出版:光文社

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「機捜235」シリーズ、第2作。

1作目は連作短編でしたが、こちらは長編。

締まった連作短編シリーズが長編になった場合、短編を間伸びしたような「薄味」になっちゃう時がありますがw、本作については緊張感をうまく継続できてるように思います。

 


序盤は前作と同様に事件が立て続けに起こって、連作短編風。

その一つの事件が「人質事件」になり、さらには「テロ事件」に…というのが後半の展開になります。

今野敏作品の場合、警察組織の機能分化をしっかり反映させるので、リアルさはある一方で事件の最後は淡白に見えちゃうところもあるんですが、本作は最後まで登場人物たちが事件の解決に立ち合います。

しかもなかなか派手な展開。

 


ベテラン刑事・縞長さんの「ダメ刑事時代」を知る刑事との軋轢とかは前作にもありましたが、それを上手いこと組み込んで、縞長の「レジェンド」ぶりを広く知らせる流れには溜飲が下りました。

チョット持ち上げすぎかもしれんけどw。

 


警察上層部の「有能ぶり」が少し鼻につくところはあるかな?

まあ、そこら辺は「隠蔽捜査」の方でイロイロやってますからねw。

シリーズ2作目としてはナカナカの出来じゃないかと思います。

3作目へのハードルは上げちゃったかも、ですが。

 

 

 

#読書感想文

#石礫

#機捜235

#今野敏

 

 

 

物語が広がっていきそうな展開。:読書録「勘定侍 五 奔走」

・勘定侍・柳生真剣勝負<五> 奔走

著者:上田秀人

出版:小学館時代小説文庫

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面白いんだけど、一巻ごとの展開があまり早くないので、「少しまとまってから読もうかな〜」と思ってたんですが、実家の母が「早く続きを送れ」とセッツクので、やむなくw読みました。

 


「敵」のはずの堀田正盛のところに飛び込み、お互いの「利益」のために協調路線を組んだ主人公。

実家(柳生家)との微妙な関係もありつつ、「商人」としての能力を駆使して、ドンドン人脈は築き上げていく。

一方、世情の方は何やら九州にキナ臭い気配。

そこに柳生十兵衛が江戸にやってきて…

 


というのが本巻の流れ。

「会津騒動」に話が向かうのかと思ってましたが、その前に「島原の乱」か。

いやぁ、なんかドンドン話がデカくなってくるなぁ。

女性の戦いも、いよいよ乱戦模様になってきたし…。

と思ったところで、「以下、次巻」w。

う〜ん、次までどれくらい待たされるのかしらん?

 


とりあえず、読み終えた本は実家の方に送りました。

すぐ読んじゃうだろうから、別のシリーズも送るようにしたほうがいいかなぁ。

 


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紹介本エッセイ…じゃなくて、かなりガチ本でしたw。:読書録「新しい声を聞くぼくたち」

・新しい声を聞くぼくたち

著者:河野真太郎

出版:講談社

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ジェーン・スーさんと堀井美香さんのPodcast「Over The Sun」は毎週夫婦で楽しみに聴かせてもらっています。

「オバサン」を模した題名にあるように、40代・50代の女性向けの番組で、「オバさん」という蔑称を自称することで意味の書き換えを行うことを意図しています。

…って、大半は相当なバカ話で、大笑いさせてもらってるんですけどねw。

 


二人の話を聴いていると、特に相談への回答なんかに、昭和・平成を生き抜いてきた「働く女性」の生きづらさの経験と「今立っている」ことの自負、そしてそのことへの惑いのようなものを僕は感じたりします。

基本は「フェミニズム」なんですけどね。

制度的な不平等を是正しつつ、社会的な慣習の中に組み込まれた「男女役割論」に直面しながら、争い、いなし、打破してきた世代。

その「強さ」のようなものを自負として持ちながら、「強さでいいんだけ?」っていう若干の迷いのようなものでしょうか。

(現時点では実現もしてないんだけど)全てのジェンダー的な不平等が制度的にも社会的にも意識的にも解消されたとして、その先にあるのは「個々人の強さ」「能力の差」その結果としての「格差」と「分断」

…それでいいんだろうか?、と。

 


本書はそういった戦後の「フェミニズム」の流れを踏まえつつ、そこから投射される「男性性」の変遷について、それがエンタメ系のコンテンツにどういう風に反映しているのか…を論じている作品です。

ちょっと似た感じだと少し前に「新しい教養としてのポップカルチャー」を読みましたが、あっちよりも学術的な知識を要する「ガチ本」でしたw。

知ってる作品の「読み直し」や、読んでない作品の紹介を期待して読んだんですけど、そういう軽〜い感じで読むにはチョットしんどいかも。

とはいえ、いちいちバックグラウンドとなる知識を調べながら読むなんてことをする時間も気力もないんで、結果的には流し読み…みたいな感じにはなっちゃったかな。

ところどころ引っかかりは覚えたし、考えさせられもしたんですけどね。

 


制度的・社会的なジェンダー格差を乗り越えていく。

…多分、ここについては日本の社会においても共通認識はできてると思うんですよ。

ただその向こう側にどういう社会が姿を現すのか。

「性差」ではなく、「能力差」による、<格差>(金銭的にも、社会評価的にも)が激しくなる社会であり、その結果としての<分断>が待ち受けるだけではないのか?

作者は「新自由主義」という定義でそういう社会を想定していますが、

「そうかもな〜」

と思うんですよね。

そこで「能力がない」人は、男女関わりなく、社会の劣後者として扱われるようになる。

「フェミニズム」の進展、それを反映した新しい「男性性」は、その「新自由主義」社会の中にとらわれているのではないか/しまうのではないか…というのが作者の危惧なんじゃないか、と(流し読みだから、誤読は十分にあり得ます)。

その構図は、僕にも共感できるものがあります。

(もちろん現時点において制度的・社会的「男女格差」は解消されていないし、「能力主義」にはその背景となる個々人の「社会的資本」の差があることも十分に承知していますよ)

 


じゃあ、どういう社会を目指すべきなのか。

「新自由主義」社会は、どうやれば克服できるのか。

 


「福祉国家に戻れば」…という意見もあり得ますが、そもそも「福祉国家」の制度設計には「男女役割論」が組み込まれている面もあることから、作者は「普遍的ケア」に支えられた社会の成立のために「ベーシック・インカム」に注目します。

性別や所得等、属性によらず、「家族」ではなく「個人」に支給されるセイフティネットとしての「ベーシック・インカム」には「普遍的ケア」を支える可能性がある、と。(多分)

もちろん「BIでなんでも解決!」ってわけじゃなくて、いろいろな留保をつけた上で…ではあるんですけどんね。

 


「学びを階級から解放する」という最後の提言あたりには「う〜ん…」ってものを感じるトコもあるんですけど(こういう言い回しそのものが階級的というか、リベラル臭いというかw)、そうやっていくしかないよな〜とも思います。

ここを「上から目線」じゃなくて、どうやって定着させていくかってのは、「リベラル」にとって非常に重要な命題になってますし。

 


ま、「流し読み」ながら、紹介された「怪獣8号」はかなり面白く読ませてもらいましたし、「カモンカモン」以外のマイク・ミルズ監督作品も見てみたいなと思いました。

それだけで個人的には「収穫あり」、かな。

「Beaststars」はチョット手を出しかねますが…w。

 

 

 

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全5話じゃ足りないかな…:ドラマ評「17才の帝国」

NHKの土曜ドラマ。

星野源が出演してたんで、第1回を何の気なしに見たんですが、結局最後まで毎週見てしまいました。

個人的には結構ツボでしたねw。

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<近未来の202X年、世界から斜陽国と呼ばれるようになった日本の現状を打破すべく打ち立てられた「Utopi-AI」、通称UA(ウーア)構想の下、AIによって選出された若きリーダーたちが地方都市を未来都市へと変貌させるために奮闘していく姿を描く「青春SFエンターテインメント」>(Wikipedia)

 


こういう話の場合、「ビッグブラザー」(1984)や「スカイネット」(ターミネーター)、「マトリックス」のように、<人間vs AI(マシン)>という構図になって、「ディストピア」的な展開になったり、AIサイドの裏に権力者の「思惑」が絡んでいることが明らかになり、彼らの思惑を打ち砕くような「陰謀論」的な展開になったりするのが定番だと思うんですが、本作はギリギリのところでそれを回避しています。

物語的には権力者たちの思惑が絡んでたり(総理や地元の有力者、内閣補佐官等)、AIの暴走(主人公が作っていたAI<SNOW>)があったりするんですが、それ自体は「ドラマ」を推進させるためのマクガフィンでしかなくて、テーマとしては「理想の社会を追求すること」「その中でAIを活用することの可能性」をメインに据えてるんじゃないかなぁと思います。

第1話から第4話くらいまでの展開はそんな感じ。

逆にいうと、「第5話」でディストピア展開と陰謀論展開を突っ込んで、無理やり終わらせた感もあるかなw。

 


AIを使った直接民主主義の可能性の追求や、多様な意見や考えを可視化しつつ、選択肢をわかりやすく提示していく取り組みなんかは、DX・AIの政治・行政への導入・活用の可能性を見せてくれてナカナカ興味深かったです。

単純化しすぎという意見があるのはもちろんでしょうが、ここはその「可能性」を評価したいんですよね。

(「AI」をシンギュラリティを超えたものではなくて、方向性のある(したがって限界もある)機能として提示したあたりも、リアリティを感じさせました。(だからこそ3つのAIがあるのだし、「SNOW」が暴走したりもする)

ヤングケアラーや世代間格差なんかにもチャンと言及してる点もよかったと思いますよ。

 


でもまあ、全般的にもっと突っ込んで欲しかった感はありますけどね。

市役所職員の削減の話なんかは、「労働の流動性の向上」の問題につながるわけですが、そこでの職業再訓練やマッチングの話、教育のあり方の変化等、もっと具体的に見せてほしかったです。

同時に、そこには「どうしても、取り残される」人たちの問題もあると思います。

そこまで焦点を当ててくれると、もっと作品として深みが出てきたんじゃないかな、と。

 


…って、そんなこと言ってたら、「5話」じゃ収まりませんなw。

できればもっと長いシリーズで。

あるいは本作をベースにした書籍なんか、出してみたら面白いんじゃないでしょうか。

出版部門もある、NHKさんに期待…です。

 

 

 

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