鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「江戸川乱歩+半藤一利」風ミステリー:読書録「深夜の博覧会」

・深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説

著者:辻真先

出版:創元推理文庫

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物語は、戦前(昭和12年)を舞台にした、江戸川乱歩を思わせる「エログロ+大仕掛けミステリー」。

そういう物語を、80年以上経って、空襲によって失われた名古屋や銀座の風情、忘れ去られた博覧会(名古屋汎太平洋平和博覧会)を甦らせて舞台立てとしつつ、関東大震災の朝鮮人虐殺や、満洲併合等などを背景に組み込むことで、半藤一利にも通じる戦前の昭和日本の軍国主義に対する批判的な見解を打ち出していく。

 


大仰な(非現実的とも言える)トリック

「え、ちょっと無理矢理ちゃうん?」の動機

 


それがまあ、乱歩タッチw。

でもそこに戦争の陰と悲惨、帝国主義の非人道性を重ねて語るあたりが、「今」コレを書く意味なんでしょうね。

 


1932年生まれで、「戦前」を経験している作者ならでは…

なんですけど、80歳を超えて(本作出版時は86歳)この筆力にはビックリ。

僕が読んでる辻さんのミステリーは「仮題・中学殺人事件」のシリーズ(高校と受験があったかな?)くらいなんですが(もちろんシナリオ作品はたくさん拝見しています!)、ミステリーとしての「風格」は、本作の方がズッと上がってるように思います。

(ま、あのシリーズの内容とか、すっかり忘れ去ってるんで、漠然とした印象ですけどw)

 


さて、本作を読んだのは、もちろんシリーズの次作「たかが殺人じゃないか」が評判になってるから。

こういう書きっぷりで来てるってことは、辻さんは「昭和」と言う時代をミステリーで語ろうとしてるのかもしれません。

 


こりゃ、次も読まないとなぁ。