鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「今」を考える:読書録「21レッスンズ」

・21レッスンズ  21世紀の人類のための21の思考

著者:ユヴァル・ノア・ハラリ  訳:柴田裕之

出版:河出書房新社(Kindle版)

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人類の歴史を、「虚構」「物語」(「共同幻想」と言ってもいいかな?)から解き明かした「サピエンス全史」。

現代を支配する「人間至上主義」という<虚構>が、AI・アルゴリズム・バイオロジーにとって変わられる「未来」を描いた「ホモ・デウス」。


圧倒的に面白いこの2作で時代の寵児となった感のある作者の新作。

テーマは「今」。

前2作の「狭間」において、人類がどういう状況に置かれているのか、その中でどうすべきなのか…について、「21」の視点を挙げながら考察しています。


我々の強みでもあり、弱点ともなりうる「虚構」。

今とらわれている「物語」から、次の「物語」を創り出すために、どういうスタンスをとるべきか。

過去と違って、圧倒的なスピードで進化し、迫ってくるAIやバイオロジーの影を意識しながら、問い掛けが投げかけられます。

 


まあ、「答え」があるわけじゃないですがね。

あえて言えば、自分たちがとらわれている「虚構」「物語」に自覚的になり、それを相対化すること。

その手段として「瞑想」が作者個人が使用するツールとして紹介されていますが、それはツールであって、その向こうに「どういう<物語>が立ち上がるのか/立ち上げるべきか」という答えは明確には示されていません。

示すことができるものでもない…とも言えますが。

 


ちなみに「21の視点」は以下。


<テクノロジー面の課題>

1 幻滅

2 雇用

3 自由

4 平等


<政治面の難題>

5 コミュニティ

6 文明

7 ナショナリズム

8 宗教

9 移民


<絶望と希望>

10 テロ

11 戦争

12 謙虚さ

13 神

14 世俗主義


<真実>

15 無知

16 正義

17 ポスト・トゥルース

18 SF


<レジリエンス>

19 教育

20 意味

21 瞑想

 

 

 

全2作に比べると、作者のパーソナリティが強く反映してるってのも特徴ですかね。

イスラエル出身というのは知っていましたが、ゲイだというのは知りませんでした。

ユダヤ人であること

ゲイであること

アイデンティティについて深く考えざるを得ない立場が(二重の意味でマイノリティであるとも言えます)、作者の思考を深めたと言う面もあると思います。


前2作を読んだ人なら、さらに刺激を受けるのは間違いなしっス。