・天才の思考 高畑勲と宮崎駿
著者:鈴木敏夫
出版:文春新書
文春文庫で「ジブリの教科書」ってのが出版されてて、そこに鈴木さんの文章が出てるのは知っていました。
「面白そうやな〜」
とは思ってたんですが、ジブリ作品ごとに一冊(20冊出てるのかな?)なんで、全部買う気にもなれず…ところに、その文章をまとめて文春さんが新書にしてくれました。
ありがたや、ありがたや。
…と思ったら「かぐや姫の物語」がないんですよね。
「高畑勲を語るに、あれは重要でしょう」
とちょっとガッカリしてたら、あとがきで鈴木さんのコメント。
<心残りは、「かぐや姫の物語」のことだ。原稿を読み返してみて、気がついた。自分の気持ちの整理が出来ていない。これではダメだ、読む人にいらぬ誤解を与える。そう考えて、今回は外すことにした。もう少し時間を掛けて考えてみたい。その機会が訪れることを願って。>
…ああ、そうかもしれませんね。
色々あった上に、高畑さんは亡くなっちゃいましたから。
「次の機会」を僕も待つことにしましょう。
本書自体はジブリ作品ごとの「制作話」をまとめたもので、多くはすでに色々語られてることです。
それを作品ごとの制作時系列と重ねて整理することで、より臨場感が増してる感じですかね。
一言で言えるのは、
「いやぁ、高畑勲も、宮崎駿も、お近づきにはなりたくない人種ですな」
ってことw。
二人が天才なのは間違いないし、偉大な作品を残したことで、ある種の「歴史」に名を残すことは間違いないでしょう。
そこには「伝説」も生まれる。(本書で語られるエピソードが、その「伝説」になるとも言える)
「でも<神格化>しちゃいかん」
と鈴木さんは思ってるんじゃないでしょうか。
「天才だし、素晴らしいアーティストだけど、<人格者>じゃないよ」
そう念押しされてる気分になります。
ま、僕がこの手の作品や記事を読みすぎてるだけかもしれませんがw。
(一方、鈴木さん自身について、ちょっと「伝説化」「神話化」されそうな気配も見えます(宣伝や興行面で)。しかしまあ、それは他の人が批評すべきことでしょうね。押井さんとかはすでに結構やってますがw)
今の興味は、
「高畑勲という<制約>がなくなって、宮崎駿はどんな作品を生み出すのか?」
トンデモない傑作か、意味不明の凡作か、時代超えたアートか。
着実に製作は進んでいるようです。
楽しみ、楽しみ。