・裏・読書
著者:手塚マキ
出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン
この作者については、
「元売れっ子ホストで、ホストクラブを経営してて、歌舞伎町に本屋を開いている」
くらいのことは知っていました。
本を出すのも知ってましたが、特段興味もなかったのを、漱石の「こころ」について、
「男のマウンティングを描いてる」
みたいなことを書いてるってのをネット記事で読み、つい買っちゃいました。
「こころ」は個人的には強い印象のある作品なんですが、ズッと違和感も持ってるんですよね。
なんかそれに通じるんじゃないか、と。
ま、結果的には、
「ん〜、ちょっと僕の違和感とは違うかなぁ」
って感じでしたが。*
ただ「先生の奥さん」の扱いに関しては全くの同感です。(ただし奥さんサイドからはもっと強かな物語がある可能性もあると思いますけどね)
*僕自身は「こころ」については、
「作品としての完成度は高いと思うけど、史実(乃木将軍の自死)や日本における口語の成り立ちの経緯や<明治>という時代の特異性といった歴史的背景を排除して、テクストとして読むと意義が半減してしまう作品」
と思ってます。
まあ、そこら辺を排除したら、大半の人にとっては「面白くない」んじゃないか、と。
そういう意味じゃ、「現代国語」の教科書に載る意味は今はないんじゃないですかね。載ってるかどうかは知りませんがw。
本作で取り上げられているのは以下の作品。
「こころ」「ノルウェイの森」「火花」「漫画君たちはどう生きるか」「サラダ記念日」「五体不満足」「ぼくは勉強ができない」「マチネの終わりに」「容疑者Xの献身」「野心のすすめ」「眠れる美女」「走れメロス」「ぼくんち」
「ホスト」という世界に身をおいているので、その世界に通じるネタが出てくるのは、面白くもあるけど、ネタっぽすぎる感じもある。
一方で「ホスト」という(現時点では)社会的に高い評価を受けない職業につき、その世界を知り尽くしているからこその、マイノリティや「女性」から見た文学作品評…という視点はナカナカ面白いです。(特に「女性」)
作者も出版社も上野千鶴子さんの東大入学式祝辞のことは念頭になかったと思いますが、あれと、あの後の<賛否両論>を考えると、こういう作者の視点っていうのは、まだ求められるものなんだなぁと感じさせられましたね。
(この流れって、雅子さんが皇后になることにもなんだか繋がっていくような気が、個人的にはしています。
変な流れにならなきゃいいけど…)
読み終えて一番再読したくなったのは、「ぼくは勉強ができない」。
唯一読んでなかったのが「マチネの終わりに」だったんですが(恋愛小説はねぇ…)、これも「読んでみようかな」とは思わせてくれました。(実際に読むかどうかはともかく)
いまひとつ切れ味が悪かったのが「走れメロス」かなw。
なんか構えたような書評よりは面白く読めましたよ。
帯にあるような「意外な読み方」ではないと思いますがネ。