・そして、バトンは渡された
著者:瀬尾まいこ
出版:文藝春秋
写真は「本屋大賞ノミネート」となってますが、結局受賞してますね。
<わたしには父親が三人、母親が二人いる、
家族の形態は、十七年間七回も変わった。
でも、全然不幸ではないのだ>
主人公はたしかに「不幸」ではない。
彼女の「親たち」は惜しみなく、彼女に「愛情」を注ぎ続ける。
…でもだからって彼女が「オール・ハッピー」かっちゅうと、まあそうでもないんだよね。
「不幸小説」じゃあないけど、ノーテンキな話でもないです。
個人的にはやっぱり「最後の父親」である<森宮さん>に感情移入しちゃいます。
彼は「父親である」と言うことを意識して引き受け、それを全うしようとしている人物。
まあ、かなり変人ですがw。
<「(略)優子ちゃんと暮らし始めて、明日はちゃんと二つになったよ。自分のと、自分のよりずっと大事な明日が毎日やってくる。すごいよな」
「すごいかな」
「うん。すごい。どんな厄介なことが付いて回ったとしても、自分以外の未来に手が触れられる毎日を手放すなんて、俺は考えられない」>
そしてラスト。
<本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない未来へとバトンを渡す時だ。あの日決めた覚悟が、ここへ連れてきてくれた。
「さあ、行こう」
一歩足を踏み出すと、そこはもう光が満ちあふれていた。>
実の父親の判断や、二人目の母親の強引ぶりは、ちょっとリアリティを欠く部分も。
主人公の恋人のヌルさも気になるっちゃあ、気になる。
でもそれも含めて、最後に連れて行ってくれるところは心地良いものがありました。
僕は好きですね、こういうの。