鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読んでてイライラしてくる:読書録「岩盤規制」

・岩盤規制  誰が成長を阻むのか

著者:原英史

出版:新潮新書

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作者は元通算・経産官僚で、内閣の規制改革推進会議委員を務めてる方。

加計学園の獣医学部新設の件なんかでは国会で答弁もされているようです。


<政策に関わった当事者は、そのプロセスを説明する責任を負うと思っている。とりわけ論争になった政策課題では、当事者としてどう判断したかを記録に残し、あとからの検証、さらなる政策の進化につなげていかなければならない。この本は、そうした営みの一環だ。>


加計学園だけでなく、電波オークション等、かなり幅広い経験をお持ちのようですが、本書は特に「岩盤規制」に焦点を当てて書かれています。

作者の危機感の背景はこんな感じでしょうか。


「規制緩和・規制改革の必要性については80年代・90年代に世界的に認識されていた」

「日本もこの必要性は認識しており、政治・行政の場で早くから(ケースによっては世界に先駆けて)議論されていた」

「その結果としての国鉄民営化等、いくつかの成果が上がったのは事実。しかし一方で議論ばかりで具体的な緩和・改革に踏み込めずに今に至っている分野があまりにも多い」

「世界の潮流としては規制緩和・規制改革は<前世紀>(20世紀)の課題。先進国を始め、多くの国はこの課題に手をつけ、現在はその<先>の課題に踏み込んでいる」

「日本のビジネス面での停滞は、この改革を実施できなかったことが大きいと考えており、それは今後も大きなハードルとなる」

「議論を先んじながら踏み込めなかった理由が<岩盤規制>。政治家・官僚・業界団体の鉄のトライアングルによって既得権益を守ろうとした結果、<岩盤規制>が出来上がり、ビジネスの成長を阻害するにまで至っているのが日本の現状」


例えば加計学園の獣医学部新設問題などは、獣医学協会の「新規参入阻止」の動きと、文科省の「法律を無視した」参入規制、それを支える族議員によって築き上げられた<岩盤規制>突破の流れであり、安倍首相への「忖度」の結果とするのは、過去の経緯を踏まえない筋違いの論議…というのが作者の主張になります。


僕自身は加計学園の件については別の考えもあります。

「1学園だけでも突破とする判断」「1学園だけが準備が進んでいた背景」「行政サイドの突出した対応の背景」…あたりはやはり問題なのではないかと。

ただ作者が主張する通り、「獣医学部協会・文科省・族議員による<不条理な>岩盤規制」の問題、その背景にある「事前規制から事後チェックへの流れに対する<面従腹背>」などはもっと議論すべきであり、そここそがポイントとされるべきであったというのは賛成できます。

上記の「危機感の背景」は僕も共有していますから。


まあ、マスコミの問題も大きいですよね~。

本書は電波オークション・放送と通信の融合等の流れの中でその点に触れていますが、課題を冷静に議論すべきメディア自身が、既得権益を持っており、<岩盤規制>を支えているという構図。

これはやはり問題でしょう。

邪推すれば、加計学園の件でも、報道が「既得権益側」に切込まなかったのは、自身の既得権益への危機感故だったのではないか…と。

(そこまで意図的だったとは思いませんが)


とはいえ、本書が出版されたり、ネットの中でメディアの既得権益が論われたり(軽減税率の話とかも)、徐々にこういった点が「見える化」されつつあるってのもあるでしょう。

スピード感に対する危機感は確かにありますが、前進しているのも確かではないか、と。

大阪ダブル選挙の結果なんかも、そう言う流れの中で捉えることもできるかな…などと個人的には思ったりしています。

自分自身は結構「既得権益側」だったりするんですがw、やっぱりその延長線上に前向きで明るい社会はないんじゃないかな、と思うんですよね。


かなりオススメの一冊です。