・フェルメール
著者:植本一子
出版:ナナロク社。
現存するフェルメールの35の作品を見て、写真に撮るために、7ヶ所14都市17美術館を巡り、作品の写真(一部は撮影禁止で、ポストカードだったりしますが)とともに、美術館や周りの風景も収め、巡ったときのことをエッセイとして書き記した一作。
日本でやってる「フェルメール展」との連動なのかしらん?
個人的には「博物誌」の次の、「寝る前の一冊」として購入。
…したのに、一気に読んじゃいましたw。
いや、これはいい本です。
フェルメールの作品を撮った…というには、本作に収められている写真はスナップ風の印象が強いものが多いです。
「フェルメール展」のHPに作品の写真が載ってますが、随分と印象が違う…。
もちろん、写真じゃなくて実物をみなくちゃ…というのが正解なんですが、それにしても、
「絵画の作品を写真として撮る」
というなら、もうちょっと他のやり方も…と思います。
思うんですが、じゃあ本作が「フェルメール作品の解説としては失敗作」かというと、全くそんなことはない。
これほど「フェルメール」の作品に向き合える本は、そうはないんじゃないかと感じるくらいです。
一つには作者が「カメラマン」というのはありますかね。
フェルメールは「光」の使い方が絶妙な画家ですが、そこらへんをカメラマン的な視点からなぞることで、フェルメールの狙いのようなものが浮き上がっているように思います。
そして美術館の佇まいと、絵と出会う過程を描いたエッセイが、実にいい感じです。
「作品」そのものの<力>というのは確かにある。
だけど400年の歴史を経た作品には、「背景」のようなものがあって、それが今置かれている状況の中に滲み出てくる。
読んでるとそんな気分になります。
収められている写真は、それはそれで作品として素晴らしいんですが、それは「フェルメールの絵の写真」というだけじゃないんですよね~。
さて、2月からは大阪にフェルメール展は巡回してきます。
東京の9点に対して6点と、ちょっと寂しいけど、ラインナップは興味深い。
見たい…とは思うけど、恐らくはごった返す中で見る「フェルメール」にはどんな意味があるのか…。
ふとそんなことを考えちゃいます。
だからって、7カ国17美術館をめぐる根性もないんですけどね~w。