鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「信頼」をどう築くか、なんですよねぇ。:読書録「憲法問答」

・憲法問答

著者:橋下徹、木村草太

出版:徳間書店

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「政権奪取論」で橋下氏の今の政治に対する見方について、興味を覚えたので、続けてこれを。

「憲法(特に9条)」は、「政権奪取論」で否定していた「イデオロギー論争」を引き起こしやすいネタですからねw。


個人的にはものすごく面白かったです。

「イデオロギー論争」ではなくて、<法理論>と、「国際情勢」や「社会情勢」なんかの<実情>をどう橋渡しするか、「行政」にどう活かしていくべきか…みたいなことが、法律家同士の議論・意見交換として語られています。

まあ、時に細かすぎて、「三百代言の戯言」みたいに思えるようなところもなきにしもあらずですがw、僕自身は興味深く読める部分が大きかったですね。

「手続法」の重要性(特に民主主義においては)なんかは前作(政権奪取論)でも語られていましたが、持論の披露に終わらず、相手あって話をしていく中で、理解も深まったし、考えさせられることも少なくなかったです。(沖縄の基地移転に関する指摘等)


「9条」に関しては、「ルール」と「当てはめ」の議論が展開していきます。

国際情勢の変化の中で、「当てはめ」の内容や範囲が変化してきている(「ルール」とされているエリアまでに及んでいる)と言う橋下氏に対して(ある意味「憲法改正しなくてもできることは多い」とのスタンス)、木村氏は「ルール」と「当てはめ」の線引きを重視し、変える必要があれば(その必要性については木村氏は多くは語っていません)「ルール」を変える努力をすべき(=憲法改正)という考え。

「9条」に関しては、延々とこの議論が展開する印象でしたw。


僕自身は、「どちらにも一理ある」との立場。

背景や現状認識については橋下氏に近いと思います。ただ現状で<一票>を投じるとすれば、木村氏でしょうね。

・国際情勢の変化を考慮して現在の憲法解釈を変えるなら「憲法改正」すべき。

・改正までに憲法違反に相当するような事態が発生したならば、政治の責任において憲法違反を前提に緊急防止措置を講じるべき。

…みたいなところです。


橋下さんの考えもわかりますよ。

現状の国際情勢を考えると、9条を中心とした憲法解釈では十分に対応できない。しかしながら憲法改正を行うには社会的な反対も多く、時間もロードもかかりすぎて、国際情勢のスピードに追い付けない。

「解釈」と「当てはめ」は異なるし、橋下さん自身は法的な裏付けの重要性も強く認識されています。

「解釈」で乗り切ろうとする安倍政権の危うさも、結果としての「解釈」そのものの歪さにも認識がある。

だから…

…なんでしょうが、結局言葉を重ねれば重ねるほど、橋下氏の信頼度が下がっちゃうんですよね。

=「何か裏で自分の都合のいいように変えようとしてるんじゃないか」


ここは安倍政権が陥ってる状況にも近いところがあります。

だからこそ橋下さんは「モリカケ」での安倍氏の対応を強く非難してるんですが、まあ安倍さんほどグダグダでもないし、一貫した理論があるのは理解できますが、それでもこの考えで一般に信頼されるのはチョット厳しいかなぁ…と。

そしてそうである以上、「改憲はしなくても<当てはめ>で対応可能」って主張が広く受け入れられる可能性は低いのではないか、と思うわけです。(自衛隊を行政組織としたまま活動を広げていくとしたらなおさら)

民主主義の王道を考える橋下氏としては、それは本意じゃないでしょう。


やっぱり「憲法論議」は鬼門かもしれません。

本書は決してイデオロギー論争になってませんし、実に興味深い問題提起をしていると思いますが、ここを立脚点にして政党を作ろうとしたり、野党連合したりするのは、無理かな。

やはり政策の選択肢を広く提示できる政治環境を作っていき、与党への対抗軸を構築する…という方向性を先行させるのがいいんじゃないか、と。

その流れの中で、そうした取り組みを誠実に行う政治勢力に対する<信頼感>が醸成されてきたならば、それはそれで「憲法論議」の方向性も変わってくるんじゃないか、とも考えたりします。

僕自身は「憲法改正はしたほうがいい」と考えてますので…。


<橋下  僕は今の日本において、ここまでの改憲をやっていいとは思いません。最終ゴールは日本がしっかりと軍を持ち、安保理決議による軍事措置や集団的自衛権に基づく武力行使を当然含む普通の軍事力を持つことだと思っていますが、モリカケ問題で露呈した政府組織の体たらく、陸上自衛隊日報隠ぺい問題で露呈した防衛省・自衛隊組織の体たらく、国のために戦って命を落とした兵士をきちんと祀ることのできない靖国問題、戦争で被害にあった国民への補償制度の欠如などの今の日本の状況を見ると、とてもじゃありませんが、日本政府は完全な軍事力を持つことはできないし、そんなのを持たれたら危険極まりないと思います。>


まあ、概ね賛同。


なんかでも、その前に安倍政権が余計なことをしちゃうそうな気もします。朝鮮情勢が大きく動いている中、ここ一週間ほどは経済情勢の方も何やら怪しくなてきてるので、どういう流れになるのかは、ホントわかりませんが…。


しかし、橋下さん。今後どう動くつもりなんでしょう。

政治家への復権はないと思うんですが…。

ちょっと興味深くもあります。