鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

タイムリミットがある:読書録「限界国家」

・限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択
著者:毛受敏浩
出版:朝日新書

限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択 (朝日新書)

限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択 (朝日新書)


日本が人口減少・超少子高齢化社会に入っていることはまぎれもない事実。
「どうすべきか?」
の問いに対して、
「移民すべき」
と正面から答えているのが本書。
僕自身は「労働生産性の向上」+「AI・ロボットによる労働代替」をメインで考えてきたんですが、本書を読んで改めて「外国人労働者活用」を考えさせられました。
「すでに外国人労働者は毎年増えている。その事実に目を背けていることにこそリスクがある」
という指摘は重いですよ。


本書の構成は以下。
①人口減少の日本社会への影響の考察
②「移民」に対する日本における批判の妥当性
③ヨーロッパ等の移民政策
④日本の外国人労働者の受入制度の内情
⑤外国人定住者の現状
⑥日本政府の移民政策
⑦提言(限界国家脱出プラン)


「移民」に対するネガティブなイメージはヨーロッパの混乱やトランプの主張などによって強化されてると思うけど、逆に言えばヨーロッパやアメリカは人口・労働力対策としての「移民」「外国人労働者」対策に取り組んでおり、試行錯誤しているということ。
彼等がいずれ何らかの「解」を見出した時、先進国の中で取り残された「日本」の未来は…と言うことを考えると、確かに空恐ろしくなります。
トップランナー群から落ちて行く覚悟が果たして我々にあるのか?
と言うことです。(もうギリギリのところにいるけど)


東アジアはまだ人口増大地域が多く、国家として成熟していない国も多い。
外国人労働者」受入の最大のポイントは、「受け入れる労働者の条件を定める」と言うところにあり、現時点であれば、日本の「望ましい」条件を設定して受入をることは可能。
ただし韓国・中国等が猛烈な勢いで少子高齢化に向かっており、早晩彼等が「外国人労働者」争奪の競争相手となることを考えると、その対策に踏み出すタイムリミットは刻々と迫って来ている…と言うのがもう一つのポイント。
「日本はいい国だから」
と言っても、本書で述べられているように「移民者に選ばれる」為には制度や社会環境等、相当にいろいろなことを整備しなきゃいけません。それには結構時間がかかるし、国民の意識改革も不可欠となる。
多文化主義ではなく、インターカルチュラル政策」
ってのは全くその通りだと思うんですが、これは簡単なことじゃないですよ。


「自治体が主体となって取り組むと、可能性が広がる」
ってのは、「地方創生」とも絡んで、これからの日本を考える一つの「示唆」でしょうね。
これは言ってみれば、「抜け駆けOK」と言う考え方。
「日本全体でやってくんじゃなくて、やれるところがドンドンやって、切磋琢磨し、自分たちだけでも『豊か』になる道を探す」
ってことです。
<公正>じゃなくちゃいけないけど、<公平>である必要はない
って感じかな?
僕自身、こう言うスタンスには違和感も感じるんですが、でも「国家単位」では錯綜する既得権益者の調整は極めて困難なだけに、こう言う方向性でしか突破口は開けないのではないか、と。
イロイロ難しいことはあるでしょうがね。(安倍政権のスタンスはどうなんかなぁ〜。なんかここがすでに錯綜しているようにも感じます)


労働生産性」「地方創生」などを考える人にとっては一度は「読むべき」作品なのではないか、と思います。
読んで楽しい本じゃないのは確かですが。