鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読むと暗い気分になるけど、「リアル」なトコなんでしょうね:読書録「未来の年表」

・未来の年表 人口減少 日本でこれから起きること
著者:河合雅司
出版:講談社現代新書


人口動態・推計をベースにして、2017年から2115年までに「年代順に何が起こるか」を示し、その対策を論じた作品。
多くの「未来予想」と違って、「人口推計」っていうのは大きくブレることはないと言われています。さすがに100年というスパンだと、多少のズレが生じる可能性はありますが(ポイントは出生率)、現状を考えると、概ねの方向性はこんな感じでしょう。


「日本は人口減少局面に入った」「少子高齢化が加速する」等の話は「常識」の範疇に入っていると思いますが、本書の特徴は「人数」(「率」ではなく)に注目し、そのインパクトを具体的に記しているところ。


<日本の難しさは、人口減少をもたらす出生数の減少、高齢者数の増加、そして社会の支え手である勤労世代の減少という、それぞれ要員の異なる3つの課題に同時に立ち向かわなければならないところにある。しかも、これらは全国一律に進むわけではない。>


「地方消滅」と言ったことはよく語られるようになってきていますが、「高齢者数」とそこに対応できる施設や医師の数などのことを考えると、一極集中する首都圏でこそ「医療・介護地獄」が生じる(2040年)などと言った指摘は、(聞いたことはあるものの)改めて強く印象に残りました。
まあ、「地方が大丈夫」って話ではなくて、「都市圏も地方も大変。それが人口が減るということ」って話なんですが。


では、どうすればいいのか?


<求められている現実的な選択肢とは、拡大路線でやってきた従来の成功体験と訣別
戦略的に縮むことである。>
<人口激減後にどのような社会をつくるのか、われわれの構想力が試されている。いまこそ「20世紀型成功体験」と訣別するときなのである。>


この事態を「静かなる有事」と捉え、作者は「10の処方箋」を提示しています。


1 「高齢者」を削減(高齢者の定義区分を変更する)
2 24時間社会からの脱却
3 非居住エリアを明確化
4 都道府県を飛び地合併
5 国際分業の徹底
6 「匠の技」を活用
7 国費学生制度で人材育成
8 中高年の地方移住推進
9 セカンド市民制度を創設
10 第3子以降に1000万円給付


「これが現実的?」ってのもありますが、そういうことを考えなきゃいけない状況にあるってことでしょう。
「静かなる有事」ですから。
(個人的には賛同できないものもありますが、前例にとらわれず、大胆な社会変革に着手しなければいけない…というスタンスには賛同できます)


時々、「産経」っぽい論調が顔を出すあたり(移民のとことか)、違和感も感じるんですが、全体としては「警鐘」をしっかりと鳴らす、良い本だと思います。(処方箋の中には産経スタンスから考えたら、「大丈夫?」ってトコもありますが、そこも含めて「有事」なんでしょうね)
ホント、読んでると暗い気分になるんですが、だからといって「なかったこと」にできるような話でもありません。
この「未来予想」を前提として、個人として、組織として、そして社会・国として「何」をするのか?
これを真剣に語るべき時が既に来ていると言うことです。
「おすすめ本」です。