鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「スペイン」が意外:読書録「不寛容社会」

・不寛容社会
著者:谷本真由美
出版:ワニブックスPLUS新書


この作者の作品では「ノマド社畜」「日本が世界一『貧しい』国である件について」を読んでます。
海外在住&勤務経験の長さから、日本の現状や流行に疑問を投げかける…って感じでしょうか。
一時期、「日本はダメだ」論がもてはやされたのが、保守派が力を持つ中で(日本が経済力・国力を落とす時期と重なってますが)「日本ってスゴイ、素晴らしい」あるいは「他の国(中国・韓国が多いですね)はダメ」本が流行ってきたんですが、ここに来て、またチョット流れが…って印象もあります。(アトキンソンさんとかね)
「森友事件」の影響があるのかどうかは分かりませんがw。


ただ本書については一方的な日本批判・海外礼賛ではなく、「海外だって、色々あるよ」って紹介もあって、そこが面白かったりもしました。
「スペイン」がバリバリの集団主義同調圧力が強い国だ…ってのは僕としては意外な印象。それが「経済破綻にまで繋がった」ってので「日本はそこまでじゃ」と思いかけたけど、バブル崩壊前後を考えると、似たようなもんかもしれませんな(最近の大企業不祥事についても)。
「イタリア」については、「そんな感じかな」って印象もあるんですけどねw。


「不寛容」「個人叩き」という点では、アメリカやイギリスのような「個人主義」が徹底している国では殆どないとのこと。
でも同時にそれは「階層」の移動が少ないということでもあって(親の財力で子供の階層が決まっちゃうから、言っても無駄…って感覚)、それはそれで「ええんかいな」って気持ちもあります。
「生まれ」で決まる「階級」じゃなくて、職業や収入で区分され「階層」ですからね。
その移動が最も少ない国がアメリカ…となると、「アメリカン・ドリーム」の現状は寂し次第ということかと。


作者は「ソト」と「ウチ」を差別するムラ的社会から脱却するために、「個人主義」を強めること、その結果として「身のほど」を弁える「枯れた国」になることを主張してますが、「う〜ん…」って気分です。正直。
度を越した「平等主義」はアカンと思ってるんですが…。
他人叩きや正義感の暴力にはウンザリなんですが、「階層」の固定を是認し、諦めるような社会でいいのかどうかは…ってことです。


< 例えば日本の職場においては、些細な間違いや違いを指摘することが「正義」だと思い込む人が少なくありません。
(中略)
そのような間違った思い込みによる「正義感」の発動は、本質的なことと無関係なことが多い>
<彼らが「正義感」をかざして言っていることの世界観は非常に小さく、柔軟性もありません。振りかざされる「正義感」はほとんど歪んでいて、本質を無視している。誰に何を言われるから怖いーなどと、細かいことばかりに異常にこだわる人が大勢います。>


…なんて、「正義感」に関する指摘にはうなづけます。
そういう「正義感」には乗っかるくせに、本質的なことは権威に阿ってスルーしてしまう「マスコミ」のあり方とかもね。


もっとも「キャラ弁」のことをココまで敵視せんでも…とは思いましたw。
そこに「男尊女子」や「不合理意識」、「前近代性」が垣間見えることは否定しませんが、それもまた「多様性」の一つなんじゃないか、と。
「そんな甘いこと言ってるから変わらないんだ!」
ってことなのかもしれませんが…。
(僕自身は「キャラ弁」自体は、「ようやるわ」と呆れてますけどねw)


「じゃあ、どうすんねん」
と問われて、本書では「心の持ち方を変えていく必要がある」という結論。
「おいおい」って感じですが、まあそれしかないとも言えます。
ただ色々な人がいろんなことを指摘する中で、「心の持ち方」も変わってくるってところもあるでしょう。
その「回転」が早まってきてる感触もあります。


どっちにせよ、インターネットやSNSスマホを「なかったこと」にはできません。
少しずつ慣れてくる中で、落ち着いてくるのを期待するしかないってのが(ただし受動的ではなく、能動的に働くかけつつも)落とし所ではないですかね。