鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

反・反知性主義とは言うものの…:読書録「知の仕事術」

・知の仕事術
著者:池澤夏樹
出版:インターナショナル新書


<生きるためには、①情報②知識③思想が必要
全ノウハウを初公開>


と言うのが「帯」のアオリ。
「新聞」「インターネット」などの使い方が紹介されてますが、半分くらいは「本」ですねw。
ま、この作者ですので、違和感はないですけど。


中身については、「なるほどねぇ」と結構面白く読みました。
過去の作者の文章なんかも収録されてて、作者のファンなんかだと「水増しだ」とか思うかもしれませんが、不勉強にも僕はあまり読んでこなかったので、興味深く読ませてもらいました。
「マンガ世代」の前の世代の方の「考え方」や「スタンス」としては、割と先進的なところが多いんじゃないでしょうか。


中身とは別に僕が考えさせられたのは、「反・反知性主義」という打ち出し。


<ものを知っている人間が、ものを知っているというだけでバカにされる。
ある件について過去の事例を引き、思想的背景を述べ、論理的な判断の材料を人々に提供しようとすると(これこそが知識人の役割なのだが)、それに対して「偉そうな顔しやがって」という感情的な反発が返ってくる。
(中略)
こういう人たちの思いに乗ってことは決まっていく。
この本はそういう世の流れに対する反抗である。
反・反知性主義の勧めであり、あなたを知識人という少数派の側へ導くものだ。>


僕自身は「知識人」や「知性」に対しては敬意を持っています。(「知識人」や「知性」の定義はどうかってのはありますが、「帯」になぞらえば、「情報や知識を重視しつつ、思想を自ら築き、その思想を以って世界を観る」って感じでしょうか?そういう意味で自分自身は「知識人」に憧れつつも、届いてないとも思ってますがw)
今の社会情勢を見て、「反知性主義」の危険性を感じる点についても同じ印象は持っているんですが、一方で、
「何がそれを生み出し、なぜそれを止めることができないのか?」
ってことも気になります。


一言で言えば、
「知識人の言葉が届かなくなっている」
ココですね。
そして届かなくなっている状況で「聞かない方が悪い」というのは問題解決にならないでしょう。
「どうやって言葉を届けるのか?」
反知性主義に危機感を覚える側は、このことを真剣に考えるべきなんじゃないか、と。
「お前が悪い」
それじゃあ、話は前に進みません。
<少数派に導くものである>
このスタンスも、な〜んか「上から目線」っぽいんだよなぁw。


ま、「もっと分かりやすい言葉で話そうよ」ってことなんですけどねw。
それも行きすぎちゃうと、「反知性主義」の範疇に入っちゃうって考え方もありますが、でもこのスタンスは絶対に必要だと、僕は思ってます。


しかしそう言えば、「池澤夏樹」氏って「福永武彦」氏の息子さんだったでしたね。
忘れてましたw。
本作にはそこら辺の「親子関係」に言及してる下りもあって、これはこれで面白かったです。


・・・なんてことを面白がっちゃうのも、「届く言葉」的にはいけないのかもしれないですね。いやぁ、難しいわ。