鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

現状の整理と方向性の確認に:読書録「第四次産業革命」

第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来
著者:クラウス・シュワブ 訳:世界経済フォーラム
出版:日本経済新聞出版社Kindle版)

第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来

第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来


世界経済フォーラム」の創設者が、今後の経済・社会を大きく変えると想定される「第四次産業革命」に関する世界フォーラムの報告をまとめた作品。
年末の「2016年ビジネス書トップ10」だかなんだかの記事で見かけてDLしました。なんか乗せられた感じもするけどw。


論文じゃないんですが、ベースが報告書なんで、なんとなく文章が硬く、「漢字が多いなぁ」って印象ですがw、「現状」を整理してあると言う意味では年末年始に読むのにはちょうど良い本だったかも。
巻末に「ディープシフト」として、今後想定されるテクノロジーの具体的な発達とその影響が列挙されてるんですが、これなんかもイメージをつかむのに役に立ちます。


個人的には「第四次産業革命」というくくりには賛同できない面もあるんですけどね。
第一次産業革命:蒸気機関車と鉄道の発達(1760代〜1840代)
第二次産業革命:電気と流れ作業による大量生産革命(19世紀後半〜20世紀初頭)
第三次産業革命:メインフレームコンピューター(1960代)・パーソナルコンピューター(1970代〜1980代)・インターネット(1990代)によるデジタル革命
この区分は僕も良いと思ってるんですが、デジタルテクノロジーのさらなる高度な発展とそれによる社会変容を「第四次」と区分するより、それこそが「第三次産業革命=デジタル革命」の目指すところである、と言うのが僕の考えです。
個人のエンパワーメントから社会を変えるって言うのは、まさにスティーブ・ジョブズらが目指し、今もシリコンバレー精神の中に根付いているものだと思うんで。


ただ「第四次」とくくり出すことで、注意を集め、その時代への対処を改めて考えさせる…と言う意味では、こういう「レッテル」も悪くないかもしれません。
本書で作者が言っているのは、これからのデジタル革命はスピード感、広がりが今までにないものであっただけでなく、社会構造を変えてしまう「深さ」ももたらす。そこにはメリットだけでなく、リスクもあり、だからこそ幅広いステークホルダー(国際社会、政府、民間企業、市民団体etc,etc)の合意と方向性の共有がひつようである…ということ。
この「レッテル」はそのための「注意喚起」と捉えることもできると思います。


個人的にはデジタルテクノロジーを享受していきたいと思っている立場です。本書でも指摘されている通り、そこには「失業」「プライバシー侵害」等のリスクが少なからずあり、それは「格差」という形で既に社会を覆いつつあるような気がしています。
ただそれに背を向けても、デジタル革命は、スピード感・広がり・深さにおいて想像以上のものがあるだけに、影響を逃れることはできません。むしろスマホクラウドの登場と展開に背を向けた日本のデジタル産業が大きな遅れを取ってしまったように、その判断そのものが「格差」や「停滞」に繋がってしまうリスクをはらんでいると思います。(失われた20年の原因にも繋がるところです)
デジタルテクノロジーの進展を前向きに捉え、社会や経済、個人の生活の中に組み入れつつ、そのリスクについては個別具体的に制度や仕組み、規制で対応していく。
こういうスタンスが必要なのではないか、と。
これは本書の主張でもありますね。


「個人」という意味ではデジタルテクノロジーに対する「情報格差」が気になります。
「今現在はなくてもすむけど、気がつくと追いつくことができないほどの格差が生じている」
それがデジタルテクノロジーだと思うからです。
でもなぁ。
50すぎると、なかなかついていくものも大変ですよ。
そんなこと言ってたら、懐古趣味のおっさんにすぐなっちゃうから、そうならないように気をつけてはいるんですがねw。