鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

現政権に対しては割りと批判的ですね:読書録「独裁の宴」

・独裁の宴 世界の歪みを読み解く
著者:手嶋龍一、佐藤優
出版:中公新書ラクレ 

独裁の宴 - 世界の歪みを読み解く (中公新書ラクレ)

独裁の宴 - 世界の歪みを読み解く (中公新書ラクレ)

 

 

帯にあった<市民のいらだちが募り民主主義が歪み始める」に惹かれて購入しました。民主主義の機能不全から非民主的メカニズムに対する期待が高まっていると言うのは今の僕の関心の1つなんで。

 

手嶋龍一と佐藤優と言うインテリジェンスに精通した2人による対談。何冊が出てて、僕も1、2冊は読んだことがあるように思います。
まぁ、「インテリジェンスの巨匠」(帯)と言うだけあって、グローバルな視野で今の世界情勢を、大所高所だけではなく、裏側も含めて語ってくれています。お互いのインテリジェンス自慢というか、持ち上げ合いが鼻につくところがあるんですがw、それぐらいはお愛嬌。

 

作品としてはまず北朝鮮の核開発に関して語り合い、アメリカ・ファーストの視点からトランプ政権の北朝鮮対策・中国対策について論じた後、独裁化がそこここで進む世界情勢についてコメント、それらを踏まえて日本の現状・今後の見通しについて語っています。
安倍政権に対してはどちらかというとネガティブな評価ですね。北朝鮮のロケット発射に関しては「騒ぎすぎ」と言う点で2人の意見は一致しています。
創価学会と公明党の関係から自公政権の基盤の脆弱さを語っているあたりは、佐藤優氏の独壇場ではありますが、はてさてどうなんでしょう。
「そういう見方もある」と言うあたりで頭に留めておく位が良いのかも、と個人的には思っています。

 

<グローバリゼーションの進展で、経済も政治も格段にスピードが速くなり、国家の意思決定はますます迅速さが求められるようになった。手間もコストもかかる見主義への市民の苛立ちが募るばかりだ。>

 

これも帯にまとめられている文章ですが、まぁ確かにそーゆー状況なんでしょうね。

 

<「 世界では民主主義が十分に機能している」と言う大前提で考えると、現実政治の実態を見誤ってしまいます。>(手嶋氏)

 

「それでも民主主義は捨てられない」というのが2人の共通認識でもあるんですが。

 

混乱するヨーロッパやアメリカの現状、日本の停滞なんかと比較して、中国の成長やロシアのプレゼンスの向上等を考えると、独裁的手法あるいは非民主的メカニズムと言うものの有効性が語られるのはやむを得ないのかもしれません。
「歴史」に正解があるわけじゃありませんからね。もしかしたらそちらの方向に現状打破する何かがあるのかもしれません。
ただ過去の事例を見ると、往々にして独裁的手法は長期的には破綻すると言う事例の方が圧倒的に多いでしょう。
まぁ、何より僕はそーゆー社会で生活したいとは思わないですね。それは自分の子供たちの未来にとってもそうです。

 

現状を冷静に分析しつつ、自分たちの社会がどちらの方向に進んでいくのが最も望ましいのかを考えつつ、その時点でできる手段を的確に講じていくように努力する。
結局、それしかないんでしょう。「現状を冷静に分析」と言うところがインテリジェンスの出番。

 

トランプ政権のエルサレムのイスラエル首都移転を読み違えているあたりもありますから、何もかもが2人の手のうちで動いているわけじゃありません。
それでも、いろんな観点から興味深く読める作品であるのは間違いないと思います。現実主義的でありながら、それなりに理想家でもありますからね、この2人は。