鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

確かに「世界」は変わったんだなと、改めて:読書録「スティーブ・ジョブズ<上・下>」

スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで<上・下>
著者:ブレッド・シュレンダー、リック・テッツェリ 訳:井口耕二
出版:日本経済新聞出版社

スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで(上)

スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで(上)

スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで(下)

スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで(下)


「さて、iPhone7Plusのジョットブラックはいつ手に入りますかね」
と思いながら読み終えた作品w。
iPhone7Plusはジョブズが手がけた製品ではないし、もしかしたらその理念には反しているかもしれないけど(大きくなってますからね)、それでもそのベースにはジョブズの思想の影響は色濃くあると思います。
「個人」をエンゲージメントするツールという意味で。


読む前はもっと「暴露本」めいた作品かと思ってたんですが、全然そんなことはなくて、(原題Becoming Steve Jobs/副題の通り)「偉大なリーダー/ビジョナリー」にジョブズが「何故なれたのか」に焦点を置いた、ちょっとビジネス書寄りの作品になっています。
チャーチル・ファクター」に近い印象がありますね。


ポイントは「Next・ピクサー」時代。
第1期のアップル時代は、確かにビジョナリーではあったが、「運」にも恵まれて成功への道を歩むが、それが故に自分自身をコントロールする術を持っていない若者(まだ20代!)が、「自滅」する結末となります。
それに続く「NeXT」では、このジョブズの「悪い」部分が表立ち、迷走に迷走を重ねますが、その一方で「ピクサー」での経験が(意図せずして)ジョブズにクリエイターとの関係や、成熟した組織経営のあり方を学ばせ、そのことが第2期アップル時代の、「世界を変える」成功に繋がる。
ここが本書のポイントでしょうね。


基本的な事跡は公式自伝を読めば十分(結構身近な人は嫌ってるようですがw)。
そこに「意味」を求めた時、「ピクサー」の存在が大きく出てくるのが本書の面白味です。
「没落寸前でのラッキーパンチ」
とか言ったもんじゃないんですね。
ラセターや(ピクサーのトップの)キャットムルとのプライヴェートにまで及ぶ関係にそれが表れています。


ジョブズの人間味のある側面を描き出す一方で、暴露本等で「有名」な「くそ野郎」ぶり(w)にもちゃんと言及してて(ヒドイのはホントにヒドい)、バランスも取れてると思いますね。


スティーブ・ジョブズは起業家としてのスキルと能力を進化させてきたし、世界に衝撃を与えたいと使命感のようなものをもって突きすすんできた。その側面を読者のみなさんに深く理解していただきたい。>


この作者の目的は十分果たせている作品だと思います。


ゲイツが自身のことも含め、「全てをジョブズ一人がやったわけではない」とコメントしていますが、それは確かでしょう。
そのことは本書に紹介されるチームの奮闘を読めば分かります。
それでもジョブズがいなければ、「世界」は今のような姿ではなかったんじゃないかと、僕は思っています。
それがいいことなのか、悪いことなのか。
僕は楽しみたいと思っていますがね。


しかしまあ、確かにpc作ってた時代のアップルの生産数と、iPhoneの生産台数は天と地ほど違うし、その集中度やスピードも全く隔絶してるんですな。
そのブリッジをジョブズはきっちり超えてきたんだから、これはこれで結構すごい話(その功績の一端はクックにあるようですが)。
7Plusの生産が追いつかないのも、仕方がないかと。
…いや、それでも早く手に入れたいですけどねw。