鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

戦いたい人だけの話ではない:読書録「『世界で戦える人材』の条件」

・グローバル企業で30年間伝え続けてきた「世界で戦える人材」の条件
著者:渥美育子
出版:PHP研究所(Kindle版)

「世界で戦える」人材の条件 (PHPビジネス新書)

「世界で戦える」人材の条件 (PHPビジネス新書)


お仕事がらみで読んだ本。
中国で関連会社のトップを務めた先輩の講話をお聞きする機会があったんですが、その中で先輩が推薦されてたんですよ。非常に刺激を受けたお話だったので、その場でKindleにDLして読ませていただきました。


多分先輩の話を聞いてなかったら、
「ふ〜ん」
って感じだったでしょうね。
ちょっと自己PR臭が鼻につくところもあるしw。
でも「実体験」を聞いた後に読むと考えさせられるし、納得もさせられる内容でした。自分の立ち位置という意味でも、部下の人材育成という意味でも。


「グローバル」という観点から言うと、
「それは海外で働く人や、海外企業と競合する人の話」
と思いがちですが、そうじゃないんですよね。
少なくとも大企業はすでにそのフィールドを海外に広げている。自身が海外に出ていなくても、何らかの形でビジネスは海外のマーケットと連動したり競合したりしている。
…と言うことはそこで「働く人材」は、否応なく「グローバル」な競争の中に組み込まれているということ。自分の「働き方」や「パフォーマンス」の競合は、業界他社や国内企業の労働者だけではなく、「世界」の労働者なのだ。
…「戦いたい人」「能力がある人」だけの話ではないということですね。フィールドはいつの間にやら「観客席」にまで広がっていたわけです。こっちの気持ちや意思とは関係なく。


そういうスタンスに立って読むと、世界を「リーガル、モラル、レリジャス」という文化コードをベースに分析・分類し、その文化的な影響要素を重視した「学び」を強調する考え方には非常に納得感があります。
「ビジネス現場」ですからね。
学究的な正確さはとりあえずは必要なくて、まずはザクッとした「構図」を頭の中に入れる。
このスタンスは正しいと思います。


と同時に、
「これって格差の問題につながるなぁ」
とも思いましたね。
現在、付加価値の源泉は大きく「知識労働」に移りつつあり、「格差」は「階級」ではなく「知識」から生まれるようになっているというのは橘玲氏なんかも論じてましたが(その根本に「階級格差」が影響している点はあるにせよ)、本書で論じられているような「グローバル人材」に必要な「学び」はかなり高度な「知識」に属すると思いますし、「教えられる」ものではなく「自ら学ぶ」ことが必須なエリアでもあります。
「戦う」意識がある人はキャッチアップしようとするでしょう。
しかし「巻き込まれた人」は?
そして気づこうが気づくまいが、すでに誰もがその「戦場」に立っているとしたら?
この「知識」という武器を持っている人のみが「勝つ」ことができるってのが、現代の「格差」の構図なんじゃないかと思った次第。
単なる「知識」じゃなくて、「付加価値を生み出す知識」じゃないとダメで、だからこそ圧倒的格差がついちゃうってのもありますが。


自分のことも考えなきゃいけないし、子供達のことも考えさせられました。
そして部下の人材育成という点でもギアを変えなきゃいかんのだな、と。
正直いうと本書だけ読んでそういう気持ちになれるかどうかは分かりません。僕の場合はやはり「先輩の話」があればこそ。
でも僕は読んでよかったと思ってますよ。Amazon評価はいろいろあるようですがねw。