・言ってはいけない 残酷すぎる真実
著者:橘玲
出版:新潮新書
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/04/15
- メディア: 新書
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<この本の内容を気安く口外しないで下さい。
遺伝、見た目、教育に関わる「不愉快な現実」>
ってのが本書の帯の「煽り」ですが、そこまで「不愉快」には感じなかったというか、割と挙げられてる研究や実験結果は僕自身は知ってることが多かったです。行動経済学や進化心理学がらみの作品は結構出版されてて、その引用も含めて、結構目にしてることが多かったんでしょうな。
「橘玲」の作品を何冊か読んでる…ってのも、もちろんありますw。
とは言え、じゃあ本書で述べられてることが「常識」になってるか、っていうと、そんなことはないでしょう。「俗論」とまでは言いませんが、一般的な「常識」として語られてることと、本書で紹介されていることが反するってのは、少なくないでしょう(だからこその「言ってはいけない」w)。
僕自身、「知ってる」けど、ついってのは結構あります。「ファスト」思考というところでしょうか?
もっともじゃあここで紹介されたことが、それこそ「真実」かっていうと、「どうかな?」とも思いますけどね。
研究や実験のベースになる「データ」がどこまで正確なものなのかってのもありますし、さらにはそれを「どう解釈するか」ってのもあります。かつては「正しい」と思われてたことが、その後の研究でひっくり返されることなんて、珍しい話じゃありませんからね。
本書では「常識」を最新の研究をベースにして「ひっくりかえして」いるわけですが、いつそれがまたひっくり返されるのか。
こういう研究については常に一定の留保をつけるべきでしょう。
(「統計」の問題もあります。
「◯◯%の確率」とは言え、それは「100%」じゃない。その時、「可能性が高いからといって、それを「既定の事実』と置き換えるのは危険である」ってのは「優生学」の悲劇を見てきた人類にとっては忘れちゃいけないことでしょう。
作者の主張する通り、「統計的事実を踏まえて対処を考えるべき」ってのはその通りなんですが、時に「可能性」を「事実」に置き換えてしまう暴挙を起こしがちなことも忘れるべきではないでしょう。
政治的な誘惑が強く働きがちでもあるがゆえに)
この手の話を知らない人なら、一読しとくべき作品かもしれません。そういう観点からはまとまってる作品でしょう。
でもそこには一抹の「留保」もつけるべき、ってのが僕のスタンスです。
合理的じゃないかもしれませんが。