鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

前半はチョット…w:読書録「結婚式のメンバー」

・結婚式のメンバー
著者:カーソン・マッカラーズ 訳:村上春樹
出版:新潮文庫

結婚式のメンバー (新潮文庫)

結婚式のメンバー (新潮文庫)


新潮文庫でシリーズ出版がはじまった「村上柴田翻訳堂」の一冊。
「おお、村上春樹と柴田元幸の新訳シリーズがスタートか!」
と思ったら、二人の新訳は2冊ずつで、あとは他の人の翻訳本の復刊なんですね。ま、いいけどw。


でも、これは村上春樹の新訳本。
12歳の少女フランキーの「気の触れた夏」を描いた作品です。


こういう「ちょっと周りとの間に違和感を感じ続ける、空想がちの子供」…と言えば、思い出すのが「ライ麦畑でつかまえて」。これは「ライ麦畑」よりも先に書かれた作品だけど、そういう傾向の作品の文脈ってのがアメリカ文学にはあるのかな?
そういや、ヘミングウエイの連作短編にもあったような…。


それはともかく、正直言って、前半の「周囲への違和感から空想の設定に落ち込む」あたりの展開は、あんまり楽しめなかったです。非常に精緻で、いい文章だなぁとは思うんだけど、なんせ「12歳の少女」への感情移入がちょっとできないw。
同じような「違和感」は多かれ少なかれ誰もが感じるものだし、僕自身にも確かにそういうところはあったんですが、「思えば遠くに来たもんだ」w。
「理解」はできるんだけど「感情移入」はできませんでした。


でも中盤から終盤の展開は良かったなぁ。
中盤の少女と親戚の少年、そして黒人の女料理人とのやりとりや、コミュニティ的な雰囲気は読まされました。
そして短い終盤の展開。
「気の触れた夏」の終わりを痛感させられます。


中学高校とは言わないけど、もう少し若い頃に読んどくべき作品かなぁ。
その経験を踏まえて、「今」(50のおっさん)になって読むと、それはそれで何か違う感慨があるような気がします(「ライ麦畑」にはそういうトコがチョットあります)。


「いい作品」
なのは間違いないんですけどね。