鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

耳が痛いけど、一読すべき作品。:読書録「良い戦略、悪い戦略」

・良い戦略、悪い戦略」
著者:リチャード・P・ルメルト 訳:村井章子
出版:日本経済新聞出版社

良い戦略、悪い戦略

良い戦略、悪い戦略


「リスク時代の経営学」を読んで、「面白そう」&「あまり知らないな」と思った作品がコレ。で、早速読んでみました。
「仕事で役に立つ」っていうよりは、「読んで面白そう」ってのが一番の理由ですが。


で、確かに面白かったです。
同時に、結構今の仕事にも役に立つ「考え方」かなぁ、とも思いましたね。これは望外。


主張は比較的シンプルです。と言うか、作者は「理論」で整理されたような「戦略論」に対しては批判的であり、「現実主義的」なスタンスを取っているので、主張も「理論」ではなく、現実分析に基づく「考え方」「スタンス」のようなものです。


作者によれば「良い戦略」と言うのは以下の様な「基本構造」を持っています。(これを「カーネル(核)」と呼んでます)


1 診断 状況を診断し、取り組むべき課題を見極める。良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明快に解きほぐす。
2 基本方針 診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す。
3 行動 ここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動のことである。すべての行動をコーディネートして方針を実行する。


この基本構造からの問いかけを「帯」では明確に提示しています。


<「実行」と直結しているか?
「単純明快」で「単刀直入」か?>


いやはや、全くその通りですw。


ちなみに「悪い戦略」の特徴としてあげてるのは、こんな感じ。


「空疎である」
「重大な問題に取り組まない」
「目標を戦略ととりちがえている」
「まちがった戦略目標を掲げる」
(3番目あたりは要注意、要注意…w)


これらのことを豊富な実例を挙げて説明していて、これが読んでて実に面白いんですよね。そういう本を目指したらしいんですが、成功していると思います。ま、だからこそ「名著」と言われてるんでしょうがw。


もともと「電気工学」を専攻してたって経歴もあるんでしょうね。作者は「実際的」であることを極めて重視します。
「ポジティブシンキング」なんかはケチョンケチョンw。
個人的には「ポジティブシンキング」には「個人」としてのあり方や精神状態の向上の点で意味があると思ってるんですが、まあ確かにそれを「戦略」に持ち込むのは違うでしょうなw。
ここまでケナさなくてもいいような気もしますが。


作者が想定している「戦略」は組織(会社)の存亡そのものに関わるような「課題」への取り組みになります。
そういう意味じゃ、毎年恒例のように打ち出される「方針」や「戦略」とは、チョット違うんですよね。(そっちはどっちかっていうと「組織運営」の範疇でしょう)
それでも「芽」はいつだって「現場」にあります。
その「芽」を見落とさないためにも、現場での組織運営的な「戦略」においても、「カーネル」は意識されるべきではないか?
僕が得た「気づき」はそう言う問題意識に基づいています。
だからこそ「課題抽出」ってのは重要なんだよなぁ!


まあ理論的なことを「どうのこうの」よりも、まずは「読んで面白い」ってのが素晴らしい。
「戦略」にたずさわる人は、是非ご一読を。