鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「物申したい」ってとこ?:読書録「本能寺遊戯」

・本能寺遊戯
著者:高井忍
出版:創元社文庫(kindle版)

本能寺遊戯 (創元推理文庫)

本能寺遊戯 (創元推理文庫)


「柳生十兵衛」を探偵役にした歴史ミステリーシリーズのある作者の単発(多分)作品。
結構シリーズが好きだったので、購入。


本作の主人公、なんと「女子高生」。
ガチガチの歴史フリーク、陰謀論好き歴女、アニメ大好きロシア人留学生という3人組を主人公に、雑誌投稿のために「お題」として出された「歴史上の『謎』」について、「新説」「謎解き」をひねり出す…というのが基本的設定。雑誌で賞を取るためなので、まずは「賞が取れそうな」インパクトのある「謎解きを」…と言う流れですから、「歴史の裏にある、真実を」みたいな話ではありません。


取り上げられるのは、
「本能寺の変」「ヤマトタケルと草薙の剣」「春日局」「道鏡の変」
まあ「本能寺」以外はネタとしてはちょっと地味な感じもせんでもないか、と。
また(この作者の傾向なんですが)資料の抜書きが結構あって、その「古文」を読むのがなんとなく面倒くさくって…


と思いながら読んでたら、最終章はなぜか投稿先の雑誌の編集者と3人の女子高生の「打ち合わせ」の場になり、ここに至って、作者の「主張」らしきものが明かされます。


<目的は謎を解くことじゃなくて、謎解きそのもの。世間さまの興味を惹くような、センセーショナルな真相を作ること。どこが謎なのかわりとどうでもいい。ちゃんとした検証なんてものは世間のニーズと一致する場合にだけ採用してもらえる>


こういう「歴史ミステリー」のエンタメ傾向に対し、


<歴史の検証を建前にするなら、最低限、歴史的事実の隙間を縫っていくような、なるべくボロを出さない真相をこしらえないことには歴史に対して失礼ですよ。>


と語ります。
その上でなお「歴史ミステリー」の存在意義をこんな風に論じます。


<重要なのは、自分の頭で考えることだ。たとえきっかけは怪しい説だったとしても、それで歴史に興味を持ってくれて、本に書いてあるからといって鵜呑みにしないで、積極的に自分で調べようとする読者が少しずつでも増えていってくれたら…作り手の立場としてはそれでよしとしなくては>


まあ、ここら辺の鬱屈した「想い」みたいなモンは「あとがき」でもっと明らさまに書かれてるんですがねw。
でも作品としてこういう構成をし、「歴史ミステリー」について考えさせる構図ってのは面白かったです。
メタミステリーとは言いませんが、「物申したい」って気持ちが感じられる作品に仕上がっています。


もっとも資料の「古文」に嫌気が差してるようじゃ、「エンタメ」よりのポジションに僕自身はいるんでしょうがw。