鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

もうちょいハチャメチャかと思ってたけど:読書録「片桐大三郎とXYZの悲劇」

・片桐大三郎とXYZの悲劇
著者:倉知淳
出版:文藝春秋(Kindle版)

片桐大三郎とXYZの悲劇

片桐大三郎とXYZの悲劇


引退した名優が「探偵役」として実際の「事件」を解決する。


まあ、題名を見ればわかるように、エラリー・クイーンの「ドルリー・レーン」シリーズを下敷きにしたユーモア・ミステリー連作です。
探偵役を演じるのは、国民的時代劇スター「片桐大三郎」。
「三船敏郎」をベースに、歌舞伎出身の時代劇俳優たちをミクスチュアしたようなキャラ設定です。


エラリー・クイーンについては、本筋の「クイーン」よりも「ドルリー・レーン」の方が好き。
…とずっと言ってきたんですが、改めて思い返すと、もう随分と悲劇シリーズのストーリーもトリックも忘れちゃってるなぁ、とw。
本作を読みながら、本歌の方を思い出そうとしてたんですが、一番好きだった「Y」はまあ何とか。「最後の事件」も思い出せましたが、「X」と「Z」は「う〜ん」って感じです。
辛うじて思い出した「最後の事件」は、その物語自体がトリックにもつながっているので、本歌の悲劇シリーズを読んでる(覚えてるw)方が、本作は楽しめるでしょう。
「パロディ」なんだから、当たり前かw。


というわけで、十分にネタを楽しみきれたかどうかについては甚だ心もとないところもあるんですがw、まあでも退屈せずに読めましたよ。
全く本歌を読んでないとどうかとは思いますが、「何となく覚えてる」程度でもそれなりには楽しめるということでしょう。


もっとも「思ったより推理パートはしっかりしてる」ってのはあります。で、個人的にはここが「もっとハチャメチャでもいいのに」って感じはありました。
「片桐大三郎」の設定が設定ですからね。
「Z」のパロディでほぼ当てずっぽうで犯人の名前を当てますが、あのノリがもっとあっても良かったのになぁ、と。
ただそうなると「パロディ」色が強くなりすぎて、単体での「推理作品」としての水準が低くなるってのはあります。僕は「面白けりゃいい」ってスタンスですが、推理作家さんとしてはそうもいかないってのもあるのかも知れませんな。
よう知らんけどw。


ま、クイーン好きの読者は「本格」好きでしょうから、これくらいのパロディがフィットするのかもしれません。
となると僕は想定される読者層とはズレてるのかも。
…って、ストーリーをほとんど忘れてるんだから、そりゃそうかw。