鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「実践」にはハードルもありますが:読書録「最高の仕事ができる幸せな職場」

・最高の仕事ができる幸せな職場
著者:ロン・フリードマン 訳:月沢李歌子
出版:日経BP社(Kindle版)

最高の仕事ができる幸せな職場

最高の仕事ができる幸せな職場


そろそろ15年度も大詰め。
年度の仕上げの追い込みにかかっていると同時に、次年度の方針みたいなもんも考えるタイミングになってます。
まあ、色々とやらなきゃいけないことはあるし、その一つ一つに具体的なシナリオやら仕組み、取り組みが計画されるわけですが、そのベースになる「組織」「職場」をどういう風にしていくべきなのか?
…と言う問題意識から手に取ったのが本書です。
たまたまどっかの書評で紹介されてるのを見かけて、なんですがね。


作者はオバマのリサーチ・チームなんかも務めた経験がある社会心理学者のようです。
単なる学術的な研究を突き詰めるだけじゃなく、実地において色々な研究成果が活かされているのか、どういう風に活かしていけばいいのか…ってなことを考えてビジネスの世界に身を置いたとのこと。
本書はそういう経歴を踏まえて書かれています。
個人的にはすごく面白かったし、考えさせられもしました。
自分自身でも考えてたことと重なることもあれば、気づかなかったこと、「常識」や「ルール」といった「既成概念」が妨げになっていることなんかもあったりして。
一読には値する本なんじゃないですかね。組織のマネージャーにとっては。


構成としては「論理的な主張」を一冊で展開しているというよりは、色々な視点での問いかけを並列的に披露しているって感じです。
個々の項目には具体的な「設定」や「実例」が提示され、その背景を、実際に行われた研究や調査結果を踏まえた解説がされています。
まあ、こういう人間の行動や社会を対象とした実験や調査って、そもそもの枠組みや分析評価の仕方で結論が変わっちゃうところがあるので、どこまで「科学的」と言っていいのか、なんとも言えないところもあるんですが、それでも単なる思考実験や個人の「実体験」「成功例」なんかから独善的に語られるよりはずっと納得感があります。


各章で取り上げられているのはこんなテーマです。


・失敗を認める職場環境を作る
・場所の力 オフィスデザインと思考の関係
・なぜ遊ぶために金を払うべきか
・カジノから学ぶ
・他人の集まりをコミュニティに変える
・強引なリーダーがチームを生産的にできない理由
・お金よりも魅力的なもの モチベーションについてゲームから学ぶ
・人質交渉人から学ぶ いかに説得力を高め、影響力を強め、モチベーションを与えるか
・優れたマネジャーは自分自身に着目する
・他の人が見ないものを見る 面接の際に相手の真の素質を見抜く
・従業員の誇りを生む


<すべてのことがすべての人に当てはまるわけではないのを覚えておいてほしい。(中略)あなたの会社にとって完璧な提案もあれば、適切ではないように思えるものもあるかもしれない。よって、すばらしい職場を作るための画一的な手法を述べるのではなく(それは不可能だ)、あなたの企業にとって正しいと感じるものを選ぶことができるように、実証済みの材料を記載したメニューを提供するつもりだ。>


まあ、確かに「オフィスレイアウトを変えてえコミュニケーションルームを作る」とか「給与体系や人事評価制度を変える」なんてのは、ちょっと僕には手に負えないことw。
でもちょっとした工夫やスタンスの取り方で実現できる「メニュー」も確かに提示されています。


<幸福な職場を作る秘訣は、多くの出費をすることではない。従業員が、最高の仕事をできるような環境を整えることだ。>


及ばずながら、一歩は踏み出したいとお思っているところです。